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六百六十三話 GRAND Calbee

おかげさまで、母の一周忌法要を無事済ませられました。 いやぁ〜、暑かった。 集まっていただいた親族の方々には、遠方からの方もおられてさぞ大変だったと思います。 感謝です。 ありがとうございました。 海辺の家に戻って、それぞれにいただいたお供えを仏壇に供える。 いっぱいあって、積みながら眺めていると結構楽しい。 仏様のお膳を支度している嫁に。 「 UMEDA味って、これなに?」 「あっ!それ、 GRAND Calbee だわぁ! 梅田味のポテト・チップス!」 「 GRAND Calbee ? 梅田味? なに?」 「ほら、阪急百貨店の梅田本店でよくひとが並んでるでしょ、限定でそこしか買えないやつ」 「えっ、あの行列って、ポテト・チップス目当てなの?」 「そうだよ!知らんの?」 「知らん、初めて聞いた」 「Calbee ポテト・チップスの高級版で、梅田限定味とかがあるわけよ」 「ヘぇ〜、詳しいね、で、普通のやつより旨いの?」 「それは、知らん、食べたことないから」 「そこは、知らないんだぁ」 「じゃぁ、食ってみよう」 「お供えしてからね」 「いや、他にいっぱいあるんだから、ちょっと一箱食ってみよう」 ってことで、食べてみた。 どうやら、味は、焼きしお味、スキヤデ!味、ウメダ!味の三種類あるみたいだ。 まず一袋目は、焼きしお味から。 封を開けて取り出してみると、大きさや形状の見た目からしていつものと違う。 外径がふた周りほど小さくて、厚みが厚く、表面が波板状になっている。 この形状が、そのまま歯応えや食感の違いを生じさせる。 焼きと題されているとおり炙ってあって、香ばしくて旨い。 なるほど、一般のモノよりひと手間もふた手間もかけて旨さを引出しているってわけかぁ。 次に、ウメダ!味。 … 続きを読む

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六百六十話 この世で一番旨い Pesto Genovese!

大阪駅を北東へ、JR京都線の高架を潜る。 少し歩くと、いつの間にか時空が歪んだ世界に迷い込む。 木造の低層建物が、迷路のような路地にひしめいて並び建っている様はある種異様だ。 商都の一等地に灰色に燻んだ戦前の大阪が現実として生きて在る。 大阪市北区中崎町。 大阪大空襲を免れ、戦後の土地区画整理も及ばず、戦禍からも行政からも取り残された街。 長屋住人の高齢化も限界集落並みに進んではいるものの、暮らしがなくなったわけではない。 ステテコ姿の爺と普通に出くわしたりもする。 繰り返すが、此処は西日本で最も開発が進む大阪の玄関口から目と鼻にある界隈だ。 詳しくは言えない地元事情もあるにはあるのだが、それにしても街場とは不思議なものである。 此処を彷徨くようになって随分と経つが、今だ目的地に間違わず辿り着いた試しがない。 迷路が絡みつく路地世界が広がっている。 その路地の奥で偶然見つけた飯屋を訪れたのは、もう一〇数年前になると想う。 LA LANTERNA di Genova (ジェノバの灯台) 天井の低い穴蔵みたいな長屋で、外人女性がひとり営んでいた。 Boffelli Silvia さん。 生粋の Genova 人らしい。 生真面目で、賢そうで、なかなかの美人だ。 こんな路地裏食堂で、Genova 人が創る 本場 Genova 料理を食えるとは想像もしていなかった。 Genova 料理といえば、Pesto Genovese 。 伊で “ Genovese ” と注文すると、何故か違った食いものが供されたのを思い出した。 必ずと言って良いほど、牛肉と香味野菜をトマトとワインで煮込んだ茶色いパスタ。 どうも Pesto … 続きを読む

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六百五十九話 シン・トンカツ

神戸で夜の顔といえば、東門街。 それなりの歓楽街ではあるんだけど、大阪の北新地ほどオッサン臭くもない。 学生や外国人も多く行き交い、場としての敷居も低い。 震災やコロナ禍で、ずいぶん面子も変わってしまったが、それでも港街一の歓楽街として今も在る。 生田神社の東門前であることから東門街。 その生田神社にほど近い路地奥に人気の BISTRO が在るらしい。 “ BISTRO HEEK ” ビルの二階、カウンターとテーブル席ひとつのちいさな店屋だ。 肩肘を張らない店屋と聞いたが、これは張らんわなぁ。 予約したテーブル席以外は鮨詰め状態で満席、人気なのは噂通りらしい。 「いらっしゃいませ!ご予約八時まで空いてなくてすいませんでした」 「ちょっと、先に便所借りるよ」 「どうぞ、その奥になってます」 用を足していると、壁に貼られた紙に書かれてある文言が目に入った。 “ TAKE OUT   HEEK 特製 カツ・サンド ” カツ・サンドがあるということは、俺の大好物である豚カツもあるのかぁ? 「ひょっとして、豚カツやってんの?」 「えぇ、できますよ」 「マジでぇ!じゃぁ、とりあえずその豚カツで」 そして、でてきたのがこの一皿。 「なんだぁ、これ!」 「ねぇ、疑うわけじゃないんだけど、この厚みで火通せてんの?」 「大丈夫ですよ、芯温きっちり測って揚げてますから」 「じゃぁ、いただくね」 骨付き三田豚肩ロースのカツレツ。 見た目も味も、豚カツ専門店とも洋食屋のそれとも全くの別物。 しかし、何かと訊かれれば、まごうことなき豚カツだ。 骨付きならではの絶妙の歯応え、脂の溶け具合、薄くさっぱりとした衣。 … 続きを読む

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六百四十八話 久留美餅

海辺の庭にある古い藤棚を塗替えることにした。 高さ二メートル超え、広さ7畳敷きの鉄製棚、錆を落とし塗装を施す。 暑い最中、とてもひとりではやってられないので助っ人を頼む。 というか、なんなら助っ人ひとりでやってもらいたい。 陶芸家で庭師の YUMA 君に声をかけた。 実家は海辺の家近くだが、今は対岸の堺で暮らしている。 作業の途中、昼飯を食いながら訊く。 「堺だったら、“ かん袋 ” っていう和菓子屋知ってる?」 「いえ、越して間がないんで近所あんまり知らないですよね、古墳とかも行けてないんですよ」 「古墳?あんなの空から眺めてなんぼで、地上からだとただの藪だから、しょうもないよ」 「それより、堺と言えば “ かん袋 ” でしょ、それしかないから他所は行かなくていいって」 「いやに、その店屋推しますねぇ、そんなに旨いんですか?」 「日本の銘菓で此処と肩を並べられるとすれば、河内の御厨巴屋団子くらいだから」 「 団子?河内?ただの餅好きじゃないですか?それに河内って範囲狭っ!」 早速、ググってみて。 「おっ、結構有名みたいですねぇ、それに家から近いですよ」 「マジかぁ!騙されたと思って行ってみて」 “ かん袋 ” 鎌倉時代末期、 御餅司として創業と伝えられ、七〇〇年近く二七代にわたって継がれてきた味。 大阪城築城時の噺。 当代の店主・和泉屋徳左衛門が、瓦を餅創りで鍛えた腕力で天守まで放り上げて運んだ。 その様子が、かん袋(紙袋)が散るようだったことから、時の太閤が “ かん袋 ” と名付けた。 以降、“ … 続きを読む

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六百四十六話 湾岸の下町に本気の boulangerie を

海辺の家から車で一〇分ほど東に “ 和田岬 ” という湾岸の街がある。 すぐそこなんだけど、便が悪い辺鄙な場所。 噂では、こんな場所に超絶に旨いパン屋があるらしい。 とりあえず、嫁とあるという笠松商店街を目指して行ってみた。 商店街って、いつの噺? ほとんどのシャッターが下りていて、ただの下町の路地にしか見えない。 車を停めて歩いていると、横を若い夫婦が駆けて通り過ぎていく。 その先に、人集りが。 「あそこじゃないの?」 「嘘だろ?なんでこんなとこでパン屋始めたんだろう?」 小さな看板が立ててある。 “ boulangerie maison murata ” たしかに此処みたいだ。 嫁に。 「この店屋、多分そうとうに 旨いよ、俺鼻が利くから」 店先まで、なんともいえない 甘く香ばしい匂いが漂う。 店内の棚には、およそ考えつく限りのいろんな種類のパンが所狭しと積まれている。 本格的な PAIN DE CAMPAGNE から餡パン、果ては メロンパンまでが並ぶ。 「凄ぇなぁ!どれも滅茶苦茶旨そうだわ」 地元の子供が喜びそうなモノまであって、気取り無い品揃えの構えが良い。 添加物を使わず、天然酵母から生まれる夥しい数のパン。 居並ぶ客も多いが、こなす職人の数もちいさな店にしては一五人ほどいる。 その一五人が、ほぼ無言で無駄なく素早く交差していく。 たいした店屋だと想う。 店主は、村田圭吾さん。 お若いが、その職歴は華やかだ。 … 続きを読む

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六百四十二話 小正月

お飾りをはずして、菩提寺のお札を新しいのに取り替える。 一月一五日、小正月。 この日、小豆を粥や善哉にして食べる慣わしがあって、食べると一年を息災に過ごせるらしい。 小豆には、魔除けの力があり、鏡餅には神様の力が宿ると云われる。 そういえば、暮れに友人に貰った丹波篠山の小豆があったよなぁ。 享保十九年(一七三四年)創業の小田垣商店のありがたい丹波大納言小豆。 無病息災を祈願して、餅を炙り善哉にしていただく。 食べ終えた嫁が。 「わたし、風邪ひいたかも、ちょっと熱っぽいみたい」 ええっ!このタイミングでぇぇ!アカンやん!

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六百三十九話 本年の〆飯

年の瀬に従姉妹の息子が、やって来るという。 手首が、いまひとつ調子良くなかったので助かった。 迎春のしつらえと庭掃除などの作業を手伝ってもらう。 海辺の家の勝手は家人に次いでよく知っているので、あれこれ言わずともこなしていく。 お陰で早目に無事片付いた。 晩飯でも食うかぁ。 知合の猟師カーリマンが獲った猪肉を塩胡椒して焼肉に。 画家の女房が送ってくれた丹波産山芋は薯蕷ご飯に。 酒は、Bordeaux の銘酒 Chateau Lagrage Saint – Julien 。 素朴だが、妙に贅沢な食卓になった。 図らずも、すべて貰いもの。 この酒も、そうだ。 一〇年近く大学に居座り続け晴れて博士になった従姉妹の息子が、初給料で買ってくれた。 本年の〆飯として、言うことなし! ありがとうございました。皆様、良いお年をお迎えください。              

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六百三十八話 背徳の Stollen !

独仏国境の Alsace 地方にもBerawecka という干果物と木の実を使った似たような菓子がある。 Bera (梨)のパンとして古くから伝わるが、風味という点では、 Stollen には敵わない。 しかし、この Stollen も、その昔は、宗教上の供物で、たいして旨いものではなかったらしい。 変わったのは、バターを使うことが法王に赦された一四世紀以降。 今では、どんどん洗練されて、この季節の代表的な菓子として世界中で愛されるようになった。 そういった意味では、バターを使わない Berawecka の方が、原型に近いのかもしれない。 Stollen は、Christmas の四週間ほど前から一切れづつ食べていく。 聖夜へのカウントダウン的発想なのだろう。 だが、僕は、仏教徒なので、そんな悠長な食い方はしない。 毎年いろんな Stollen をかき集めて、好きな時に好きなだけ食べる。 ただ、買い求める場所によってその味が大きく異なる。 一番気になるのは、食感だ。 パン屋のは、パサパサして乾いた食感であることが多い。 元々の成立ちからすると良いのかもしれないが、菓子としての背徳感に乏しい。 そんな際には、これをぶっかけて甘くしっとりさせる。 伊の伝統的混成酒 “ Sambuca ” ラム酒でも良いのだけどアニス特有の香りが Stollen にはより合うように思う。 パン屋とは逆にケーキ屋のは、しっとりと甘く干果物を漬けたラム酒もよく香る。 だが、残念なことに宗教上の供物であった Stollen の禁欲的な感じが全くしない。 これでは、ただのドライフルーツ・ケーキだ。 パン屋とケーキ屋、帯に短し襷に長しで、なかなかいい塩梅だねとはならない。 … 続きを読む

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六百三十三話 東郷梨

夏も過ぎようかというこの時期、決まって届けてくれるのを待っている。 送り主は、鳥取の従姉妹。 出荷元は、鳥取県湯梨浜。 届け物は、東郷二〇世紀梨。 毎度しつこく箱に添えられてくる冊子にはこうある。 二〇世紀梨は町の文化であり、主要産業であり、象徴であって、民の誇りでもある。 どんだけの梨やねん!と、思わぬでもないが確かに美味い。 昨年の今頃、届いた数を食い尽くし、自ら選果場に連絡し送ってもらったほどに美味い。 二〇世紀梨には、収穫時期によって食べ頃が三通りあるという。 八月初旬の鮮やかな緑色の梨は、早熟の酸味がすっきりと口に広がる。 九月上旬のやや黄色味がさした梨は、熟度と甘味の均衡がとれた味わい。 九月下旬の淡黄色となった梨は、熟度と甘味がともに極まる。 好みは、ひとそれぞれだが、僕は、緑色が残っている間が最良の食べ頃だと思う。 シャキッとした歯応え、特有の酸味、この清涼感は他の果実ではなかなか味わえない。 そんな東郷梨は、少し冷やしてそのまま食うのが一番美味しいのだろう。 だが、こんなにあるんだから、数個ひと工夫凝らして食うのも悪くないかも。 梨に合う酒といえば Rum か Gin だが、Cocktail で飲むのは勿体無いし、西洋梨でもまかなえる。 なんかこうもっと東郷梨を活かして食う術はないものか? そこで、これ! “ 梨と葡萄の Rum 酒サラダ ” 梨と葡萄に Coconut Oil と Rum 酒をまわしかけて全体を混ぜるだけ。 だけと言っても、やるの嫁だけど。 そして、庭に生えてる Rosemary と Mint … 続きを読む

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六百二十六話 華人街の新たな扉

六月の初日。 神戸市立博物館で “ ジブリパークとジブリ展 ” を観終えて、予約していた中華料理屋へ。 目当ての “ 楽関記 ” は、元町駅から北長狭通りを少し上った処に在る。 二〇一七年開業で中華街では新参の類だが、今や神戸華人の間で知らぬ者はいない評判の店屋だ。 昼飯に立ち寄りその 小籠包と鶏唐揚の旨さに驚き、一度ちゃんと晩飯を喰ってみたいと思っていた。 しかし、都合よく予約が取れる機会に恵まれず今日に至る。 一階はカウンター席のみのちいさな構えで、奥に地下部屋へと続く錆びた鉄階段がある。 降りると、薄暗い空間に五卓ほどの席が設られていて、そのひと席に案内された。 中華街にありがちな怪しい雰囲気だが、こと中華飯に限ってはこういう店屋ほど味は期待できる。 前菜から。 “ 鹵水叉焼 ”  鹵水には、中華香辛料と水を一週間かけて煮出し、調味料を加えたタレを用いる。 料理人の手間と舌が頼りの複雑な料理だ。 “ クラゲと胡瓜の和物 ” “ 蒸し鶏 ” “ 皮蛋 ” “ 帆立貝の刺身 ” “ 酔蝦 ” 香辛料などを加えた紹興酒に海老を漬ける料理で、頭部の味噌が絶品。 “ … 続きを読む

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