六百三十八話 背徳の Stollen !

独仏国境の Alsace 地方にもBerawecka という干果物と木の実を使った似たような菓子がある。
Bera (梨)のパンとして古くから伝わるが、風味という点では、 Stollen には敵わない。
しかし、この Stollen も、その昔は、宗教上の供物で、たいして旨いものではなかったらしい。
変わったのは、バターを使うことが法王に赦された一四世紀以降。
今では、どんどん洗練されて、この季節の代表的な菓子として世界中で愛されるようになった。
そういった意味では、バターを使わない Berawecka の方が、原型に近いのかもしれない。
Stollen は、Christmas の四週間ほど前から一切れづつ食べていく。
聖夜へのカウントダウン的発想なのだろう。
だが、僕は、仏教徒なので、そんな悠長な食い方はしない。
毎年いろんな Stollen をかき集めて、好きな時に好きなだけ食べる。
ただ、買い求める場所によってその味が大きく異なる。
一番気になるのは、食感だ。
パン屋のは、パサパサして乾いた食感であることが多い。
元々の成立ちからすると良いのかもしれないが、菓子としての背徳感に乏しい。
そんな際には、これをぶっかけて甘くしっとりさせる。

伊の伝統的混成酒 “ Sambuca ”
ラム酒でも良いのだけどアニス特有の香りが Stollen にはより合うように思う。
パン屋とは逆にケーキ屋のは、しっとりと甘く干果物を漬けたラム酒もよく香る。
だが、残念なことに宗教上の供物であった Stollen の禁欲的な感じが全くしない。
これでは、ただのドライフルーツ・ケーキだ。
パン屋とケーキ屋、帯に短し襷に長しで、なかなかいい塩梅だねとはならない。
そこで、登場したのがホーム・メイドの Stollen 。
大学時代からの友人が自ら焼いた Stollen を、横浜から送ってくれた。
長々とくだらない蘊蓄をたれ流さずとも、流石によくわかってらっしゃる!
Stollen の Stollen たるギリギリの食感は、これなんですなぁ。
少し香料を加えるため、先の Sambuca をわずかに垂らす。
完璧だわぁ。

友人の手による home-made Christstollen を食しながら迎える聖夜。
贅沢だわ!

気遣いありがとうございました。良い年を家族で迎えてください。

 

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