月別アーカイブ: February 2012

八十二話 空飛ぶ PGGR BEE ?

いやぁ~、おっさんになってからの妄想はキツいよなぁ。 熊が虎柄になって “ PGGR ” “ PGGR ” に羽根が生えて蜂になって “ PGGR BEE ” そして、遂に空を飛ぶ。 イタい、イタ過ぎる妄想だ。 僕も病状が悪化しているが、この人も相当進行してるなぁ。 “ OVER THE STRIPES “ のデザイナー 大嶺保さん。 僕達にはドラッグ的なものは無用だ。 素で充分違う世界にトリップ出来る。 この頃、ちょっと元の世界に戻るのに手間取ることもあるけど。 “ OVER THE STRIPES ” って、何んか ROCKで、PUNKな感じが良いんだよね。 POPSと、ROCKの違いは何だろう。 今時のPOPSは、 ⎡目を瞑れば、あなたの温もりが思い出される⎦みたいな。 でも、おっさんは思い出さない。 ⎡馬鹿言ってんじゃねぇ、スケールが小いせぇんだよ⎦ ⎡こっちは、温もりなんかじゃすまねえ⎦ ⎡目を瞑れば、刺されたら焼けるように熱い熊蜂が頭ん中をブンブン飛回ってんだ⎦ 危なくて、熱いのがROCKだ。 … 続きを読む

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八十一話 タンポポンチョ?

今回の fiction by Musée du Dragon の話は、“ Greatest Botanic Hunter ” 妄想話の中身は、五十七話 “ Botanic Hunter ” をお読み下さい。 ただ無駄に長い話なので、よほど暇な時でないとイラッとします。 すでにイラッとした方には、ごめんなさいです。 森下公則氏との “ Hunter Pants ” に続いて第二弾を創りました。 その名を、⎡タンポポンチョ⎦という。 生理用品ではありません、“ Army Poncho ” です。 “ nude ”から発表された婦人服アイテムを原型としている。 デザイナーの丸山昌彦君とは、僕が Musée du Dragon を始めた頃に出逢う。 彼も超絶人気を誇ったスーパー・ブランドのデザイナーを退任して独立した直後だった。 … 続きを読む

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八十話 糀屋

僕は、供されたものは何でも美味しく戴く良い奴です。 だいたい、旨いだの不味いだのと、いい歳をした男が言うもんじゃない。 ただ、冷凍食品とかはちょっと。 それに、百貨店で売られている出来合いの総菜もご遠慮願いたい。 あとは、スーパーとかの………………。 ⎡いちいちうるさいよ⎦ ⎡全く、どういう育ち方すればこんな面倒な男になんのぉ?⎦ そう言われても、人生の半分以上あんたが育てたようなもんなんだから。 ところで、⎡糀屋⎦という商いをご存知だろうか。 家庭で味噌を仕込んでいた頃には、どの街場にも一軒は在ったらしい。 母が面倒がったのか、すでにその時代ではなかったのか。 僕は、⎡家仕込みの味噌⎦がどんなものかを味わったことがない。 嫁は、彼女の母から聞いて知っていたと言う。 ⎡わたし、ちょっと寄りたい店があるんだけど⎦ 明石の⎡魚の棚⎦商店街が西にきれた辺りに⎡こうじや京作⎦は在る。 構えは小さく立派という訳でもない、一見何を商っているのかもわからない。 引戸を開けて店内へ。 古い木製看板や木桶が転がっていて、古道具屋みたいな雑然とした風情である。 高校生らしい女の子が店番をしている。 この子が、いきなり商い物の能書きを説き始める。 僕は自分が能書きを垂れるのは好きだが、人のを聴くのは基本的に好まない。 が、この子はやけに熱心だ。 それに俄に仕込んだ知識ではなく、説明も要領を得ている。 ひょっとしたらこの御店のお嬢さんかも。 訊けば、創業は一六八二年。 松平直明公の御用商人として越前大野より明石に移って以来営んでいるという。 三三〇年以上、現店主で十四代。 お嬢さんかどうかは別にしても、そりゃぁ胸張っての講釈もぶちたくなるわなぁ。 せっかくなので、お嬢さんお勧めの⎡塩糀⎦について少し受売りを披露させて戴く。 塩糀は、米麹と塩に水を混ぜて熟成させたものである。 麹の米粒が少し溶けて白く濁り、とろみがあって見かけは甘酒に近い。 舐めると塩辛く、後にほんのりとした甘みが残る。 昔から野菜や魚の漬け床として用いられてきた。 お嬢さんは、この塩麹を調味料として使うのだと言う。 それも、エスニック料理やイタリア料理に。 ⎡え~、マジですか?麹風味のイタリアンなんて訊いたことないけどぉ⎦ ⎡おだまり、どうせあんたが作るんじゃないんだから⎦ 早速帰って料理にとりかかる。 いや、とりかかって貰った。 ⎡ … 続きを読む

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七十九話 できるだけ、円く。

ただの⎡円⎦を描いて⎡美⎦と称する。 西欧人と明らかに異なる感性を日本人は持っている。 禅寺や茶室の設えにある掛軸にも⎡円⎦は観られる。 ⎡円相図⎦ 仏教美術では、広く知られた図柄のひとつである。 迷いなく一筆にて描かれる墨の円。 その意味は? 悟り、真理、宇宙、一切空と説かれるが、本当のところどうなんだろう? ある禅僧によると。 ⎡その答えは見る者に任される⎦ ⎡だから、円窓とも言われ、自身の心を映す窓と解される⎦とおっしゃる。 ⎡お解りか?⎦ ⎡全然、解りませんけど、私馬鹿ですか?⎦ ⎡円⎦は描くのも難しいが、造形となるとさらに厄介だ。 昔、日本を代表する世界的ブランドの本社アトリエでの話。 パリ・コレクションにて発表する作品の最終検討会議が行われていた。 デザイン・チームや素材開発を担当するメーカの面々が顔を揃える。 其処へ、大御所デザイナーが入って来られた。 僕のブログは基本実名を旨としているが、この方が何者かは言えない。 怖すぎる。 この方の笑顔を未だかつて見た事がない。 縫上げられた作品をご覧になってぼそっと命じられた。 ⎡今回は、ま~るくしてね⎦ 聴いた瞬間、この数ヶ月の労苦が全て水泡に帰したと全員が悟った。 何故なら、目の前にある作品群が全て“Square”を基本としていたから。 勇気あるひとりのアシスタント・デザイナーが訊ねた。 ⎡先生、ま~るくとは丸ですか円ですか?⎦ ⎡両方よ⎦ 絶望的な答を残して、先生はその場を立去られた。 デザインに、丸みや円を取込むには難解な作業をともなう。 何だかんだの末、パリ・コレクションの幕は上がった。 東洋的なモチーフは微塵も無かったが、⎡円⎦は新たな日本の美として賞賛される。 さて、写真のコイン・ケースだが。 先生気取りではないが、僕もお願いしてみた。 ⎡できるだけ、円く⎦ お引受け戴いた後藤惠一郎さんは、製作過程での苦労話を嫌う。 だが、今回は珍しく試作段階で伝えてこられた。 ⎡何度もやってますけど、円くなりませんねぇ⎦ ⎡やっぱり難しいですか?⎦ ⎡う~ん、難しいけど、何とかやりますよ⎦ … 続きを読む

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七十八話 歌は世につれ、世は歌につれ。

この眺めが好きだ。 初めて目にしたのは三十四年前になる。 実家にある嫁の自室から眺める海辺の街並。 三十四年も経つと街場の様子も、変わらず同じとはいかない。 それでも、この距離で海に向かう景色はさほど変わらないように想う。 この穏やかな土地で、ロックを信奉しパンクに生きる嫁は育った。 Sex Pistoles の仕掛人 Malcolm McLaren を胡散臭く思ったりはしない。 そして、Vivienne Westwood を好んで身につけていた。 Vivienne と Malcolm のブッティック。 WORLD’S END それ以前は SEDITIONARIES と名告った。 キングスロード 430番地は、パンク・ルックを愛好する者にとっての聖地となる。 なんのこっちゃ解んないよねぇ。 でも中には、一九八〇年代のロンドンを懐かしく思い出す方もおられると思う。 英国ファッション界のカリスマも御年七十歳を越えられたと聞く。 長年にわたる英国産業界への功績により王室より称号が授与された。 ファースト・ネームの前には、男性の “ Sir ”に代わる “ Dame ” が付く。 Dame Vivienne … 続きを読む

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七十七話 港街のパン屋

⎡浪速っ子⎦と⎡神戸っ子⎦という呼名がある。 なんとなく⎡浪速⎦には無い西洋的な洒落た響きが⎡神戸⎦にはあった。 僕は⎡浪速っ子⎦で、嫁は⎡神戸っ子⎦ということになるのだが。 学生時代、同級生だった嫁に連れられて神戸のパン屋に向かった。 さほど大きな構えではないが、独特の親しみと風格が漂う店だった。 店主と職人、メイド姿のおばさんが立働いている。 御客さんは元居留地に住まう外国の御夫人と上品そうな日本人が半々くらい。 パンには、英字で名が記されており予約品として引渡される。 ⎡あの人が、フロインドリーブさんだよ⎦ ⎡なに人?⎦ ⎡独逸人だって⎦ ⎡ふ~ん、いつもこんなとこのパン食べてんだぁ⎦ ⎡いつもじゃないけど、神戸じゃ珍しい店じゃないよ⎦ 所変われば品変わるって言うけどほんとそうだな。 僕んちの行きつけのパン屋は⎡矢島ベーカリー⎦。 店主は矢島さんというおばちゃんで、残念なことに独逸人ではなく多分日本人だ。 僕は、⎡石松おばちゃん⎦と呼んでいたけど。 当時、弟分の渋い甲羅を纏ったニホンイシガメが庭の池にいた。 家人呼ぶところの⎡石松⎦という。 この⎡石松⎦に、餌としてパンの耳を袋に入れて用意してくれるのが矢島さんだった。 ⎡いしまつさま⎦とひらがなで書かれていて、ちょっとした予約品ともいえる。 亀だけど。 先日、久しぶりにお邪魔した。 “ GERMAN HOME BAKERY H. FREUNDLIEB ” 久しぶりとなったのは、阪神淡路大震災によって休業、その後店が移転されていたから。 今は、ヴォーリズが設計した旧神戸ユニオン教会で営まれている。 何故、かつての場所から移転されたのかを知る。 ユニオン教会は廃墟同然となり、取壊されようとしていたらしい。 フロインドリーブ夫妻が、自らも結婚式を挙げた教会を残そうと買取り店とされた。 Herr Heinrich Freundlieb は、戦争捕虜として来日し、一九二四年神戸にて開業した。 二度の世界大戦、戦中戦後を生抜き、阪神淡路大震災では休業を余儀なくされた。 … 続きを読む

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七十六話 The Exorcist (祓魔師)

今日は早く帰らないと。 日が暮れるとエクソシストとして、任された儀式を執り行わなければ。 一九七三年に“ The Exorcist ”、 一九七六年には“ The Omen ”。 このてのホラー映画が流行った時代がある。 二作品とも劇場で観たのだが、臭わない程度にお漏らしするほど怖かった。 今でも怖いし、最近尿道の機能が少し低下気味なので一切観ないことにしている。 友人の妹に、一九六六年六月六日産まれの子がいた。 彼女の頭に悪魔の紋章⎡666⎦があるんじゃないかと疑って髪の毛を掻き回した。 姉は激怒するわ、妹は泣くわ、大変な始末になる。 ⎡女の敵⎦とまで言われた。 僕は、人類のためをと思っただけだったんだけど。 宥めるのにあれやこれや奢らされて小遣いすっからかん。 というように、この頃から⎡悪魔祓い⎦には、自腹で比較的熱心に取り組んでいる。 話を戻そう。 今日は、二月三日⎡節分⎦、この国においての悪魔祓いが催される。 さて、祓う的となるのは⎡邪気⎦或は⎡鬼⎦と呼ばれる類である。 その姿が、片口に描かれている。 基督世界の悪魔と比べると、⎡鬼⎦はなんともひょうきんな姿でとりあえず怖くない。 祓って外に追い出すより、内に招いて家事でも手伝わしたい風情でもある。 多分、頭が一八〇度回転して顔を向けるといった技もこなせないだろう。 おのずと、祓う儀式も明るく楽しげな作法となる。 儀式の核となるのは⎡豆撒き⎦。 何故⎡豆⎦かというと⎡魔滅⎦だから。 完全に駄洒落である。 作法は、鬼に豆をぶつけて邪気を祓う。 鬼が見えないという見通しの悪い人は、適当にその辺にばら撒けばよろしい。 撒く際に、⎡鬼は外、福は内⎦と唱えるとなおよろしい。 さらに、撒かれた豆を歳の数だけ拾い集めて食べる。 以上、おしまい。 昨年のちょうど同じ日。 家に帰ると、⎡はい、これ⎦と馬鹿面した⎡鬼⎦の面を渡された。 ⎡いや、俺、エクソシストだから⎦ ⎡じゃぁ、わたしに豆ぶつける気?⎦ ⎡そんなことしたら、出て行かなきゃなんないじゃん⎦ … 続きを読む

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