月別アーカイブ: July 2024

六百四十九話 梅雨時の一席

それにしても蒸し暑い! そんなじめついた梅雨空の下、大阪に落語を聴きにいく。 木戸銭叩いての落語なんて久しぶりだ。 “ 春風亭一之輔のドッサリまわるぜ!二〇二四 ” の大阪公演。 前座は、二番弟子の与いちで “ 磯の鮑 ” その後、一之輔師匠の “ 反対俥 ” “ 千両みかん ” と二題続いて仲入り。 この頃には、冷房と師匠の軽妙な話芸ですっかり汗もひき、良い心地で本日最後の演目へ。 大抵の寄席では、演目が前もって明かされることはない。 そのお題を噺家が本題に入る前に自分の中で言い当てるのも落語の楽しみのひとつだと思うのだが。 これが、なかなかに難しい。 師匠が、枕を振る。 米国大統領 Joe Biden が酷い老いぼれぶりで、世界はこの先どうなるのか?という時事ネタで誘う。 そして、外は梅雨時で雨。 雨のなか老いた隠居が登場する人情噺? “ 道灌 ” ? “ 天災 ” ? いまひとつわからんなぁ。 いよいよ本題に。 大店のご隠居ふたりが、縁側で碁を打つところから噺は始まる。 隠居?雨?そして碁? … 続きを読む

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六百四十八話 久留美餅

海辺の庭にある古い藤棚を塗替えることにした。 高さ二メートル超え、広さ7畳敷きの鉄製棚、錆を落とし塗装を施す。 暑い最中、とてもひとりではやってられないので助っ人を頼む。 というか、なんなら助っ人ひとりでやってもらいたい。 陶芸家で庭師の YUMA 君に声をかけた。 実家は海辺の家近くだが、今は対岸の堺で暮らしている。 作業の途中、昼飯を食いながら訊く。 「堺だったら、“ かん袋 ” っていう和菓子屋知ってる?」 「いえ、越して間がないんで近所あんまり知らないですよね、古墳とかも行けてないんですよ」 「古墳?あんなの空から眺めてなんぼで、地上からだとただの藪だから、しょうもないよ」 「それより、堺と言えば “ かん袋 ” でしょ、それしかないから他所は行かなくていいって」 「いやに、その店屋推しますねぇ、そんなに旨いんですか?」 「日本の銘菓で此処と肩を並べられるとすれば、河内の御厨巴屋団子くらいだから」 「 団子?河内?ただの餅好きじゃないですか?それに河内って範囲狭っ!」 早速、ググってみて。 「おっ、結構有名みたいですねぇ、それに家から近いですよ」 「マジかぁ!騙されたと思って行ってみて」 “ かん袋 ” 鎌倉時代末期、 御餅司として創業と伝えられ、七〇〇年近く二七代にわたって継がれてきた味。 大阪城築城時の噺。 当代の店主・和泉屋徳左衛門が、瓦を餅創りで鍛えた腕力で天守まで放り上げて運んだ。 その様子が、かん袋(紙袋)が散るようだったことから、時の太閤が “ かん袋 ” と名付けた。 以降、“ … 続きを読む

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