月別アーカイブ: September 2021

五百八十五話 海辺の月見

二〇二一年九月二一日。 海辺の庭から見上げる満月。 で、ふたりぼっちの “ 観月の宴 ”。 侘しいので、弥勒菩薩さまにもお付き合いいただく。 とっておきの酒を、弥勒菩薩さま、嫁さん、僕で。 日本酒通の若い友人に勧められた秋田県新政酒造の “ 秋櫻 ”。 “ 鰯の梅煮 ” を肴に一献。 にしても、この酒うめぇなぁ。        

Category :

五百八十四話 粥

横濱の山下町、倫敦の “ SOHO ”、巴里の “ Ménilmontant ” など。 華人街の風情は、おおよそその造りに於いて似たようなものだ。 通りに面した店屋では、余所者相手に表の顔を装い、裏通りの路地には、裏の顔がある。 どちらが、彼らのほんとうの顔か?は、当の本人だって解りはしない。 まぁ、その時々の都合で表だったり裏だったりするんだろう。 異国で暮らし、代を継ぎ、根を張るためには、相応の知恵と工夫を伴わずにはやってはいけない。 その一筋縄ではいかない曖昧さが、異人街の魅力でもあると思っている。 神戸。 山と海を結ぶトア・ロードの西側通り沿いに、親子三代に渡って継がれた一軒の上海料理屋が在る。 初代創業時は、港街に漂い着いた船員相手の大衆食堂だったらしい。 二代、三代と店屋は次第に繁盛し、今では、老舗高級中華料理店として知られている。 “ 新愛園 ” よく通ったのは、学生時代。 今ほど高級ではなかったが、それでも学生の身分で気軽にというわけにもいかない。 開店前に訪れ、ちょっと店を手伝って、まかない飯をご馳走になったこともあった。 女将の徐さんが、どういう経緯で何を気に入ってくれたのかは知らない。 それでも華人でもない僕に良くしてくれた。 そんな “ 新愛園 ” が、近くの路地裏でもう一軒の店屋を営んでいる。 あまりにも趣を違えたその店屋が、高級中華料理店 “ 新愛園 ” の系列と知る者は地元でも少ない。 ビルの室外機が左右に迫る華人街の路地奥に構えられた飯屋は、“ 圓記 ” という。 アルミサッシの引戸に、パイプ椅子と安物の卓が並んだだけでなんの装飾もない店内。 数年前、初めて嫁と晩遅くに、あまりの妖しさに惹かれて訪れた。 … 続きを読む

Category :