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六百六十五話 Banana

近くに建つ老夫婦が暮らされている古館。 北側の裏庭に立派な芭蕉の木が育っている。 昔は、よく手入れされたお屋敷だったが、いつの頃からか家も庭も少し荒れた感じに。 ずいぶん前に焼杉だった外壁も一部鋼板に囲われてしまった。 頑張って手を尽くしてみても、刻と歳には勝てないのかもしれない。 だけど、それでも僕は、窓から見えるこの御宅が好きだ。 駅前の高級タワー・マンションなんかより、よほどに美しいと想う。 晴れた夏の盛り。 夕刻、海風に吹かれた芭蕉の葉が揺れながら強い西陽を遮る。 雨の日は、雨樋みたく大きく広げた葉を伝って地面に雨水が流れ落ちる。 そして、花が咲き滋養豊かな実が房となって実る。 長い年月、家屋と共に役割を担いながら老いた家人の営みを見守っていく。 この古館と芭蕉との似合の風情は、こうして育まれたのだろう。 こんな想いを抱きながら、朝に夕に眺めていたのだが。 いつまでも指を咥えて眺めていてもしょうがない。 ってことで、芭蕉( Banana ) の木を育ててみることにした。 とりあえず、小さめの Dwarf Monkey Banana で我慢しとくかぁ。          

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六百六十一話 月桃が咲く頃

ようやく海辺の家への引越と片付けを終えた。 まだ、各種手続やら何やらは残っているものの日常は戻りつつある。 この二ヶ月ほどできるだけ庭は見ないようにしてきた。 庭仕事をやる余裕も気力もなかったから。 途中、Garden Gypsy 橋口君と高知在住の Surfer が多肉植物用の石を積みに来てくれたけど。 積み終えるだけ積み終えたら帰っていった。 なので、二ヶ月ほど庭はほったらかし。 この時期二〇日以上放置すると、葉は茂り、雑草は蔓延り、もはや庭とは云えない有様となる。 今朝、庭に出てその有様を目の当たりにした嫁が。 「ヤバくない?」 「あぁ、ヤバイな」 「どうすんの? Gypsy 呼ぶ?」 「いや、奴も忙しそうだから、ボチボチと俺がやるわ」 「この暑さの中? 死んじゃうかもね」 どこから手をつけたものか? 思案しつつ眺めていると、塀際に見慣れぬ白いモノが眼に入った。 「えっ? これって、月桃の花? 遂に咲いた?」 「嘘でしょ? マジでぇ! 咲くんだぁ、これ!」 花の蕾が桃のように見えることから、漢名で “ 月桃 ” という。 台湾や印度原産の熱帯植物らしい。 日本では、沖縄で自生しており生活に密着した生姜科の薬用 Herb として広く知られている。 もう三、四年前になるかもしれない。 “ 月桃 … 続きを読む

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六百五十七話 German Iris

すっかりご無沙汰してます。 今年は、正月もなく、花見の宴も開かず、おとなしく毎日を暮らしています。 先日、海辺の庭の “ German Iris ” が蕾をつけた。 嫁が庭でもっとも大切にしている新種の Iris で、毎年咲くのを楽しみにしている。 その貴重な一本が無惨な姿に。 蕾をつけた茎は真ん中から折られ、芝生に転がっていた。 おそらく犯人は、顔見知りの野良猫なんだろうけど、よりにもよってこれを狙うとは。 まったく命知らずの暴挙にでたもんだ。 見つけた嫁は、もう怒髪天。 「なんてことを!どういうつもり?アイツ絶対に許さない!」 まだアイツと決まったわけでもないのだが、一旦アイツとなったらもうどうにもならない。 顔見知りのまぁまぁ可愛い顔をした野良猫を出禁にし、折れた Iris を拾って台所に。 Grappa の空瓶に水をはり茎をさして、開花させるつもりらしい。 「この状態じゃぁさすがに咲かないんじゃないの?」 「いや、わたし負けないから!」 もはや、Iris はわたしに、問題は勝ち負けになったようだ。 その後、水を換え適度な日当たりで世話してると、三日目に見事に咲いた。 「良かったよなぁ、なんとか咲いて」 「うん、それにしてもアイツ!」 咲いたからといって、許されるものではないらしい。

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六百四十五話 花終わり

梅はこぼれる、椿は落つ、牡丹はくずれる。 そして、桜は舞う。 この国では、花終わりを惜しんで愛でる感性を、古来より育んできたのだと想う。 海辺の庭に咲く姥桜。 風に吹かれ雨に打たれた翌朝、曇天に舞って散る。 今年の桜もそろそろ見納めかぁ。 桜は、やっぱり散り際が一番美しい。

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六百三十二話 台風一過

  台風七号が、海辺の家のほぼ真上を通り過ぎて一夜明けた今日。 心配してあれこれ備えたわりには、何事もなく拍子抜け。 それでも、風に煽られ引きちぎられた葉っぱや枝が、庭に散乱している。 本日は、一六日で送り盆。 日暮刻、盆の送り火を焚くのでそのままにしておくわけにもいかない。 汗だくの片付け作業を昼過ぎまで続けて終えた後。 ひと風呂浴びて、素麺を啜って、麦茶を飲みながら、縁側で吊り直した風鈴の音を聴く。 まったくもって、ただの爺いでしかない。

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六百二十四話 桜と藤?

海辺の庭。 手前が藤で、向うに見えるのが桜。 藤と桜の花が、重なって共にあるという姿を今まで見かけたことがない。 いくら気温が高いからと説かれても、あまりにも奇妙な景色に思える。 それはそれで大丈夫なんかなぁ?          

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六百十九話 早春

立春の朝。 残り咲く野生の菊。 今が盛りの水仙。 嫁が育てているオレンジ色のヒヤシンス。 そして、部屋の奥へとのびる春陽。 いい感じの海辺の家で。    

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六百一〇話 琉球の花

市場の花屋で、変な実を見つけたので買ってみた。 意外と植物に詳しい嫁に訊く。 「何の実か知ってる?」 「これって、ゲットウじゃないかなぁ」 「月に桃で、月桃」 「わたしも初めて見たけど、花材としてこんなのがあるって聞いたような気がするけど」 言われたとおり “ 月桃 ” で検索してみた。 なるほどこれだわ。 熱帯から亜熱帯亜細亜に分布する生姜科の植物。 沖縄では生活に密着したハーブで、飲料用、食用、滋養保健、薬用として広く用いられている。 栽培されているのではなく、冬至の頃、野生の月桃を大量に収穫するらしい。 “ 月桃 ” という名は、台湾での漢名に由来する。 花の蕾が桃のような形をしていることから「月桃」と名づけられたようだ。 ほぉ〜、なかなか可憐な風情で野趣もある。 海辺の庭にも似合いそうで、欲しい。 調べてみると、自生の北限は、鹿児島県佐多岬とある。 まぁ、熱帯域 の植物だから仕方ないのだが、鉢植えは主義に反する。 地植えでなんとかしたい。 今までも、熱帯性の蘭から観葉植物までを外に放り出して飼い慣らしてきたんだから。 過去に、本州で地植えを試みたひとはいないのだろうか? さらに、調べてみる。 すると、やはり変態的な園芸家はいるものだ。 横浜で、一〇数年にわたって月桃の地植えに取り組んでいるという方の blog を見つけた。 冬の霜や夏の日照りの対策が詳しく綴られている。 横浜で出来るのなら神戸でも大丈夫だろう。 やってみよう! “ 月桃の花を眺めて、今年も梅雨の到来を知る ” なんて。 … 続きを読む

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六百三話 曲芸的庭師

庭の改庭作業もいよいよ大詰め。 最後に樹形を整えていく。 “ 庭のGypsy ” 橋口陽平君が。 「さぁ、もう少しですよ、頑張りましょう!」 って、確実に落ちたら死ぬ場所から励まされても、悪いんだけど無理だわぁ。 歳の問題じゃなくて、生まれもった Potential の有無だから。 一緒にしないでください。

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六百二話 満開!

そして、これが二〇二二年、海辺の家に咲く桜です。 二〇二二年四月二日夜。

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