カテゴリー別アーカイブ:

五百四十八話 贈り人

おとこが、おとこに、何かを贈るという行為ほど難儀なものはないと想う。 それが、売られているものではなく、贈り手が自ら創ったものとなるとなおさらに難しい。 自分の力量に加えて、相手の嗜好や、立場や、状況などを併せて考えなければならない。 しかも、同じような稼業の相手だと、もうこれはやめておいた方がいいだろう。 しかし、ごく稀に、これをサラッとやってのけるひとがいる。 先日、その方からご機嫌伺いの電話を頂戴した。 その際に、チラッとふたつのことを言ったような憶えがある。 はなしの本題から外れて、言ったことすら忘れる程度の内容だ。 ひとつは、最近携帯電話を iphon 11 PRO に買い換えたこと。 もうひとつは、かつて商品として創った鰐革の Coin Case を今でも愛用していること。 たった数十秒の間に交わしたこの情報から、これだけのモノを創造されたのではないか? たぶんだが、そうだと想う。 この Coin Case と iphon Case は、外観がまったく異なるが、構造発想は極めて近い。 胴として二枚、襠に一枚、口に一枚と合計四枚の革で、かたちを成している。 それぞれを内側で縫合わせ、裏布は、胴の縁をぐるりと binding 処理で縫留めてある。 襠によって収納物の容量と出入れが適正に担保され、手の馴染みも良い。 なによりこのふっくらとした丸みを帯びた風情が好みだ。 角張った道具は融通が効かなそうで、性に合わない。 なので、角張って性に合わない iphon も、この Case に収めれば気分良く持ち歩けるだろう。 内側には、革製の Card Case とFastener Pocket … 続きを読む

Category :

五百四十六話 お幸せに

この時節、めでたい話のひとつでもないとやってられない。 先月、若い友人が、結婚することになった。 恵まれた家系に産まれて育ったおとこだが、その分背負っている荷も重くて大きい。 身勝手に降ろすことが適わない荷を、連れ立って背負っていこうという人と出逢えたのだから。 それは、心強いし、とてもめでたい。 海辺の家近くに在る古い洋館で、ご親族そろって祝われたらしい。 ほんとうに、良かったと想う。 そこで、なんかちょとした品でも贈ろうかとなったのだが。 なかなかに難しい。 このおとこ、嗜好が歪んでいる上に、おおよそのモノは手にしている。 好みでない結婚祝いの品ほど始末に困るものはないことは、遠い昔の記憶としてある。 無難なところで花かぁ。 花なら、そう邪魔にもならず、ふたりで楽しむことも叶う。 しかし、ただ綺麗な花というのも芸がない。 やはり、ここは、歪んだ嗜好の持ち主のことは、同じく歪んだ嗜好の持ち主に訊くのが良い。 嫁が、贔屓にしている怪しげな花屋。 “ el Dau Decoration ” 一般的な花屋の概念からすると全く異質な空間といえる。 女性 Florist の下江恵子氏も、変わっている。 「これ、可愛いでしょ?」とか言うけれど、この方の可愛いという基準がいまいちわからない。 西洋骨董の花器が、並べられていて。 「良いねぇ、これって幾ら?」って訊くと、「それ、わたしのだから」 「じゃぁ、これは?」って別のを指差すと、「あぁ、それもわたしのだから」 「あのなぁ、わたしのモノは、家に置いときなさいよ!店に持ってくるんじゃない!」 嗜めると、一向に臆せず嫁に。 「お宅のご主人、ちょっと変わってるね」 どう考えても、変わってるのはそっちだと思うが、作品の感覚は、独特で惹かれるものがある。 この日も。 「この天井からぶら下がってる電球みたいなの何?」 「硝子花器だよ、それは売れるよ」 「だから、売れないものは店に置くんじゃないって!」 「この花器使って、でっかい電球みたいなの作れる?」 「それ面白いかも!できるよ!」 「言っとくけど、結婚祝いだからね、そこんとこよろしくね」 … 続きを読む

Category :

五百四十一話 無事、終わりました。

“ 遠い昔、はるか彼方の銀河系で…………. ” 一九七七年、STAR WARS Episode IV 。 日本公開は、翌年の七八年。 大学に入ったばかりの頃で、ゼミで一緒だった女子を誘って劇場へと足を運んだ。 あれから、もう四〇年以上刻は経つ。 この物語を、いったい誰がどうやって終わらせるのか? 創案者である George Lucas ですら途中投出しかけた難解な宇宙歴史劇の終幕である。 世界中の誰もが知る物語だけに、観る側の興味はそこに集まる。 Episode  IV からの観客にとっては、無事にちゃんと終わって欲しいというのが願いだろう。 難しい注文だ。 “ すべて、終わらせる。” この至上命題を担ったのが、J.J. Abrams 監督。 僕も、“ STAR TREK ” の二作品を観て以来、多分この方なんだろうという予感はあった。 STAR WARS では、前々作 “ The Force Awakens ” に続いて、 監督・脚本・製作を務める。 … 続きを読む

Category :

五百四十話 明けましておめでとうございます。

二〇二〇年一月一日。 明けましておめでとうございます。 まったくの私事なんだけれど。 一九六〇年一月二四日に生まれたから、今年は子年の年男になる。 年男なんだから、当然の事ながら年神様の御加護をひとよりたくさん受けるはずだ。 さらに、六〇年で干支が一回りして、再び生まれた年の干支にかえってきた。 還暦で、これもまぁ、めでたいんだろう。 が、しかし、おとこは、数え年の六一歳に災厄に見舞われると聞く。 平安の世より厄年として定められていて、お祓いをしなければならないほどにヤバイらしい。 年男で、還暦で、厄年って? 俺は、どうなるんだろう? 良くも悪くも、どうなったところでたいした噺じゃないにしても、気にはなる。 自慢じゃないが、気は人一倍ちいさい。 とにかく、急いで初詣に行こう。 そして、賽銭をはずもう。 渡る世間も銭しだいで、どっちに転ぶか決まるはずだ! くだらない私事はさておき、みなさまにとってこの年が良き年となりますように。  

Category :

五百三十九話 MERRY CHRISTMAS 

今年は、海辺の家も改まったことだし、時間もあることだし、友人達も来れそうだし。 柄にもなく、CHRISTMAS HOME PARTY なるものを催すことにした。 もみの木 の TREE は、後始末が面倒臭い。 なので、 数年前に自前で作ってみた。 この TREE には、当時欲しかったモノが描かれている。 TIME・YOUTH・MONEY・FREEDOM 今現在、手にしたモノもあるし、そうでないものもあるし、ちょっとたりないものもある。 あまり深掘りすると生々しい噺にもなりかねないので、やめておく。 それより、 宴会だ! 百日紅の枯れ木に。 天使の洋燈に。 この時期、庭に咲く唯一の花 “ GABRIELLE ” を。 って、気取ってみたものの。 結局は、飲んで、食って、騒いだだけだった。 みなさま、良い CHRISTMAS をお過ごしください。

Category :

五百三十八話 還暦!

誕生月は一月だから、正確にはまだ五九歳なのだが、いづれにしても爺には違いない。 そして、爺は、還暦という括りで祝ってもらえるらしい。 「あんた、自分ではどう思ってるか知らないけど、もう立派な爺ですよ」 「みんなの邪魔にならないように、社会の片隅でひっそりと息していてね」 と、こうは、面と向かって言えないので、“ 還暦 ” で祝うフリをして爺としての自覚を促す。 証として祝いの品的なモノまで定められていて、赤色の服飾品が一般的なのだそうだ。 所謂 RED CARD で、意味するところは退場勧告である。 念の入ったことで、ありがとうございます。 しかし、暦が還るというこの節目は、悪いことばかりではない。 数十年の間、顔を合わさなかった仲間と集う機会が一気に増える。 時代を遡って、懐かしい顔ぶれと出逢う。 社会的立場や生活状況や健康状態 や外見など、それぞれではあるけれど。 遭ってしまうと、そこになんの隔たりもなく楽しく刻を過ごせる。 なにより、昭和の連中はよく飲む。 五人六人も揃えば、酒の注文を受けるだけで中居さんが席に常駐する始末だ。 相手の顔が霞むくらい煙草を吹かし、切れ目なく酒を煽る。 身体のどこが悪いだの痛いだの、どこの医者の腕が良いだの悪いだのと愚痴りながら。 決して自分の生活態度には言及しない。 “ 反省 ” の二文字は、とっくに人生のどこかで捨て去った愛すべき爺達。 宴も二時間が過ぎれば、もはやなんの集りだったのか?すら頭に浮かばない。 こんな世代も我々が最後なのかもしれないと想う。 まさに昭和の残滓だ。 いろいろとご批判もございましょうが、それでも愛していただきたい。 REDCARD だけは、ご勘弁ください。

Category :

五百三十七話 生存報告

半年も blog を放置していたら、碌でもない噂が広まるらしい。 blog が更新できないほどの病だとか、遂に死んでしまったとか。 顧客だった方から、なにか自分にできることはないか?的な mail まで頂戴した。 これはもう、ちょっとした病を患っていることにした方が格好がつくような気もしたけれど。 それはそれで、もっと面倒なことにもなりかねない。 なので、正直にお伝えいたします。 頭は悪く身体はいたって元気に、変わらず生きております。 何度か blog を更新しようかとも思ったのですが。 ずっと、“ 海辺の家 ”の改築現場につめていたので これといった噺もなく。 写真を撮ろうにも、小汚い工事現場風景しかなかったのでその気にもなれず。 気がつけば半年 経っていたという始末です。 しょうもない次第で、ご心配をいただいた方には、ほんとうに申し訳ありませんでした。 その “ 海辺の家 ” も、一年近くの改築期間をようやく終えようとしております。 古いボロ館から新たなボロ館へと、たいして姿も変えず無駄に大きな図体を晒しています。 そして来週、撮影をし、先代家主であった義母の7回忌法要を執り行って完成という運びです。 まぁ、出来栄えについては、世間的に一切賛同されることはないと承知しております。 しかし、嫁とふたりで望んだかつてこの港街にあった住処の風情は残せたような気がしていて。 ささやかな満足感に浸っている今日この頃です。 今後は、死亡説が流れない程度の頻度で blog も更新していくつもりでおります。 懲りずにご一読賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。 取り急ぎ、生存報告まで。

Category :

五百三十六話 古材柱

海辺の家を改築し始めてから、間も無く四ヵ月が経とうとしている。 で、その進捗はというと未だ半分にもならない。 工務店の担当者に。 「ねぇ、家建てるのって、もうちょと楽しいもんだと思ってたけど、全然楽しくねぇんだけど」 「こんなもんなの?」 「いやいや、段々とできてくると気分もあがってきますから」 って、いつのはなしだよ? 古館の改築は、図面通りにはいかない。 半年かけて建築家の先生がひいた設計図面も、解体してみると現実的ではない部分もある。 その都度、再考し仕様を変更していく。 どうしても手探りの作業を強いられる。 棟梁が。 「ご主人、二階の柱二本が、図面通りには抜けませんねぇ」 「柱を新材に入れ替えて残さざるをえないんですけど、真新しいのが露出しても良いですか?」 「まずいなぁ、ここにピッカピッカの白木の柱はないよなぁ」 「どうしますか?塗装でなんとか誤魔化します?」 「誤魔化すっても、太柱二本となると面が広すぎて無理じゃない?」 「ちょっと知ってる古材屋に訊いてみるわ」 そんなこんなで、古材屋の倉庫に。 “ BULLET JAPAN ” 古材輸入建材の扱いでは知られた会社で、名たる店舗の内装を手掛けてきた。 あるある、ところ狭しと解体古材が並んでいる。 百年以上の歳月を風雨に晒されて過ごしてきた木材は、やはり迫力がちがう。 が、しかし、住居内装に使用するには、古材としての主張が強すぎて使いづらい。 店舗材と住居材では、目指すところがどうしても異なる。 案内してくれた男前の若い職人に。 「もうちょっと節度のある古材ってないの?」 「はぁ?」 「いや、築七〇年くらいの家にあった柱とか」 「ないですけど、経年変化を想定してつくれますよ、僕でよければですけど」 「あのさぁ、俺、おんなだったらキミに惚れてるわ」 「ありがとうございます」 「でも、結構です!注文だけで」 「あっ、そう、じゃぁ注文するわ」 傷跡の程度や色合いを相談して、工程上一週間ほど要するという時間を待つ。 「一ヵ月程度で色は落ち着いてきますけど、これでいかがでしょう?」 「ありがとう!良い腕してるわ!」 … 続きを読む

Category :

五百三十五話 新元号

平成三一年四月一日昼。 “ 大化 ” より数えて二四八番目の新元号が、国民に無事伝えらた。 「 令 和 」 まさかの 万葉集からの出典らしいけど、日本の情緒が込められた素晴らしい元号だと想う。 おめでとうございます。    

Category :

五百三十四話 六本木歌舞伎 “ 羅生門 “ 

新元号を迎えると、市川團十郎白猿が誕生する。 期間限定、平成十一代 市川海老蔵の舞台姿もそろそろ見納めかという今日この頃。 原作 芥川龍之介 演出 三池崇 六本木歌舞伎 第三弾 “ 羅生門 ” 大阪公演を観た。 第三弾の共演者は、“ V6 ” の三宅健らしい。 そう耳にしても顔すら思い浮かばんけど。 第二段 ” 座頭市 ” では、女優寺島しのぶさん。 オンナの次は、アイドル? まぁ、客としては、木戸銭分楽しませていただければつべこべいう筋合いではない。 そもそも、文句を口にするほど歌舞伎にも芝居にも通じてはいないから。 そんな俄客でも ” 座頭市 ” の寺島しのぶさんは艶っぽく映ったし、舞台も充分に面白かった。 しかし、気になるのは演目だ。 芥川龍之介の “ 羅生門 ” って、登場人物はふたりだけだったような。 たしか、老婆と下人。 となると、市川海老蔵と三宅健のふたり芝居? 早変りもなし? 序幕 第一場 羅生門 いきなり、芥川作品には描かれていない場面が舞台に。 市川海老蔵演じる渡辺綱と市川右團次演じる茨木童子の大立ち回りから始まる。 幕前の武者と鬼の斬り合いの後、幕があがり荒れ果てた羅生門が闇の中に浮かぶ。 … 続きを読む

Category :