月別アーカイブ: March 2021

五百七十話 高瀬船

京都。 木屋町を高瀬川に沿って歩くと二条通りと交わる。 ちょうど交わった辺りに、全く懐に優しくない古美術屋が在って、来るとつい寄ってしまう。 桜の頃にゆくと、人にまみれるだけなのだが、今年は様子が違った。 人影もまばらで、なんとなく心寂しい。 この高瀬川を舞台に、漱石先生は “ 性 ” を、鴎外先生は “ 死 ” を描いた。 文豪が愛した高瀬川の風情を束の間にせよ取り戻したかのように想う。 皮肉にもだけど。          

Category :

五百六十九話 仏風鴨鍋

東京出張の帰りには、品川駅で “ Table OGINO ” に寄って新幹線に乗るというのが決まりだった。 車内用と家用に、季節毎の Pâté や Terrine を買う。 仏版 Fast Food を愉しむ。 “ Table OGINO ” の Gibier 的な味わいは独特で毎日食っても飽きることはない。 特に、“ 鹿肉とさくらんぼと栗の Terrine ” は、ほんとうに旨い。 鹿肉特有の鉄臭さとアメリカン・チェリーのシロップ煮と栗の甘露煮の甘さが交わる。 最強の Terrine かもしれない。 そんな “ Table OGINO ” の鴨鍋を取寄せて家で愉しめるというネタを嫁が仕入れてきた。 Gibier の伝道師の異名を持つ仏料理人 荻野伸也が供する “ 仏風鴨しゃぶ鍋 … 続きを読む

Category :