月別アーカイブ: June 2021

五百七十九話 Science will win !

昨日、市役所から接種券が届く。 摂取予約が大変だと聞いていたので、近所で開業している知合いの医者に尋ねてみることにする。 「摂取券届いたんだけど、予約どうしたらいいの?」 「券は手元にあんの? だったら、それ持って明日にでも来て」 「えっ!明日?だったら、嫁も一緒に行っていいかな?」 「じゃぁ、ふたりでおいで」 六五歳以下は、まだ先だと思っていたし、打てる時に打てればそれで良いという腹づもりだった。 それが、昨日の今日で摂取になろうとは、それも歩いて五分もかからない場所で。 ありがたいような、申し訳ないような気もするけれど、拒む理由もない。 とりあえず、夫婦で摂取することにした。 本日が一回目、三週間後に二回目ということで、摂取完了は七月中旬になる。 PFIZER 製 COVIT-19 VACCINE 効能や副反応も含めて、詳しくは知らない。 けれど、人類の HERO と謳われる PFIZER 社の CEO はこう云う。 “ Science will win ! ” だと、良いけどな。  

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五百七十八話 藁焼の鰹

海辺と違って、北摂の本宅に居るとどうもすることがなくて困る。 仕様が無い ので、散歩という名の徘徊に出掛けることにした。 箕面国定公園の連なる山々を眺めながら歩くのは、それなりに気分が良い。 しばらく歩いて小学校の裏手にさしかかった時、空地に停まっていた車から立昇る煙を見た。 えっ!なに?燃えてる? 近寄ってみると、燃えてるんじゃなくて、燃やしているのだった。 大柄なおっさんが、トラックの前で、楽しげに何かを燃やしている。 停まっていた車はキッチンカーで、やっていたのは “ 藁焼 ” だ。 高知で、鰹の叩きとして知られる “ 藁焼 ” をこんなところで? “ WARA ZANMAI ” と書かれたネイビー・ブルーのキッチンカーもなかなか小洒落ている。 接客しているおねえちゃんも可愛いけど、この火遊び親父の娘かなぁ? おねえちゃんが、やって来た。 「 世界初の藁焼キッチンカーなんです」 「無茶苦茶旨そうなんだけど、これって、やっぱり鰹?」 「そうです!高知の鰹で、最高ですよ!」 「土佐の鰹だったら、大蒜 添えてポン酢で食うの?」 これには、キッチンカーの中にいたおにいちゃんが鰹を捌きながら応える。 けっこうな男前で、この息の合った仕事ぶりからして家族なのかもしれない。 「いえ、一度塩で食ってみてください!塩は、別にお付けいたしますんで、是非!」 「朝一の鰹には塩でが一番ですよ、うん、ほんと美味しい!」 おねえちゃんのダメ押しで決まり。 「じゃぁ、一冊もらうわ」 「ありがとうございます!本日は、売切れちゃったんですけど、白身の鯛もやってますんで」 「また、よろしくお願いいたします!」 黙々と焼いてるだけの火遊び親父も含めて、たいしたチームプレーだわ。 徘徊を切り上げ、帰って食ってみることにする。 … 続きを読む

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五百七十七話 Home Made Dish

海辺の家。 隣の教授宅には、庭におおきな杏の木が植っている。 毎年、我家の桜が咲く前にうっすらと赤味のさした白い花をつける。 隔てた塀越しに眺めて 、今年も綺麗だと羨む。 「隣の芝生は青く、花は紅い」とはよく言ったもので、庭とはそうしたものかもしれない。 春には、我家から杏を、隣家から桜を、お互いに塀越に眺めるというわけだ。 もっとも、果樹や野菜など腹を満たせる隣の庭に比べて、うちの庭は食えないものばかり。 なので、季節毎に収穫された色々を届けていただくが、こちらからは何も返せないという始末だ。 先日も、杏のジャムを頂戴した。 今年は豊作で、たくさん実った杏。 その分、切込みを入れて半分に割り種を取り除く作業も増え、手がブヨブヨになったらしい。 ジャムは、甘めのものと甘さを控えた酸っぱいものとが、それぞれの瓶に詰められている。 甘いジャムは、パンやヨーグルトに。 そして、酸っぱいジャムは、これに。 “ American Apricot Spare Ribs ” です。 出来が良ければ、隣の教授も招こうかな。

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五百七十六話 中越料理

これは、昔の写真。 僕のなかでは、“ 鴻華園 ” と聞けばこの景色が思い浮かぶ。 港街の狭い路地裏に佇む魔窟のような飯屋。 今では、移転して綺麗になったが学生の頃はこうだった。 地元では越南料理の名店として、その名をよく耳にした。 先日、東京のお世話になっている方に御礼の品を届けるため県庁前の肉屋を訪ねた帰り道。 緊急事態宣言延長下で静まりかえる神戸の街を歩く。 坂を下って下山手通へ、通り沿の壁に懐かしい屋号が記された看板が。 時刻は六時で、宣言で定められた八時の閉店時間にはまだ間がある。 他に客の姿はなく、広い店内にポツンと腰を掛けた。 亭主の鴻本志華さんが注文を取りに厨房からでてきてくれる。 一九六九年越南生まれで、先代の息子だ。 単品注文だと二品ほどしか食べれないので、コースでお願いすることにする。 “ 什錦拼盆 ” 冷菜の盛り合わせから。 続いて、“ 越南粉巻 ” いわゆる越南春巻なのだが、生春巻ではなく蒸してある。 もちもちした皮の食感と甘辛く炒めた牛ミンチが絡む。 米を粉にして皮にするのも、すべて手作業で一枚一枚作るらしい。 うちの名物だと胸を張って言うのも納得がいく逸品だ。 “ 時菜双鮮 ” この皿に限らずとにかく何を食べても、素材それぞれの食感が良い。 併せて 、ほのかに鼻をつく越南魚醤の香りが、広東料理とはまた違った格別の風味を紡ぐ。 “ 蟹肉豆腐湯 ” あっさりと口を戻してくれる。 “ 中越双拼 ” 揚げ物が二種類。 … 続きを読む

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