月別アーカイブ: April 2018

五百十四話 OVER THE STRIPES

一緒にもの創りをしていて、楽な気分でやれる人とそうでない人がいる。 相性と言ってしまえばそれまでだが。 なんせ我の強い人間で成立っている業界だから、鬱陶しい場合がほとんどだ。 その中で、Over The Stripes の大嶺保さんは、数少ない相性の良いひとりだったと思う。 だが、互いの仕事のやり方はまったく異なる。 僕は、くだらない細部にまでグダグダと凝ってしまう。 大勢に影響がないと分かっていながらもやめられない。 凝っているうちに、到達すべき目標を見失ってしまうことさえある。 多分、脳の出来があまりよろしくないことが問題なのだと自覚している。 その点、大嶺さんは違う。 ひとつの目標を定めると、それに係わりのない要素は過程においてすべて捨て去っていく。 だから、仕上がった服を前にすると、当初なにをしたかったのか?が、ひとめで理解できる。 もの創りでは、端的であることは大きな武器になると思う。 最短距離で、最大の効果を得られるのだから。 多分、脳の出来がとてもよろしいのだろう。 こうした賢者と愚者がともになにかひとつのものを創ると、思わぬ効果がうまれたりする 。 それが面白くて、よくご一緒させてもらった。 以来、稼業を終えた今でも Over The Stripes の服を普段からよく着ている。 夫婦ともに気に入っている。 今は、これ。 「大嶺さん、このシャツ良いよね」 「いや、それカーディガンだから」 どう見ても、でっかいシャツなんだけど。 暑ければ鞄に突っ込んでおいて、肌寒ければ出して羽織るといったアイテムらしい。 その出し入れによって生じる皺についても一考されていて。 敢えて良い具合の皺が寄るような生地設計がなされている。 九九%の綿に、僅か一%のポリウレタンを混ぜることで意図的に計算された皺を表現できる。 都会の暮らしのなかで最上のツールとして服はどうあるべきか? 冷静に考察したひとつの答えが、 Over The Stripes … 続きを読む

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五百十三話 SUPER KABUKI ! ! !

市川猿之助のスーパー歌舞伎は、歌舞伎なのか?演劇なのか? ” ONE PIECE “ 公演中日、大阪松竹座で観た。 正直、そんなのどっちでもいいわぁ! 空前絶後、抱腹絶倒、無茶苦茶面白い! 一張羅着て、大枚叩いて、時間を費やして、晩飯を幕間の弁当で済ませて、それでも楽しい。 いや、それすらも楽しい。 興行師の一族に生まれて育ったくせに、芝居の「し」の字も解さない残念なおとこでもそう思う。 これが、市川猿翁が世に送り出したスーパー歌舞伎か! とにかくド派手! 歌舞伎座とブロードウェイとユニバーサル・スタジオを一気に巡ったような感覚。 それでいて、ドタバタの活劇に終わらないところがまた凄い。 浮世の喜怒哀楽を、どっしりとした構えで魅せてくれる。 「静」と「動」 芝居の醍醐味を余すところなく演じ、軽妙でいて培われた風格品格は微塵も損なわない。 絶賛とは、このような興行にこそふさわしい言葉なのだと想う。 それにしても、これだけの大芝居となると座内の方々も命懸けで挑まれているのだろう。 半年前の東京公演で、座長である猿之助さんの身にその事故は起こった。 舞台装置に巻き込まれ、腕を複雑に骨折された。 激痛の中、猿之助さんは声を飲み込まれたそうだ。 まだ席に観客が残っておられて、その気づかいから耐えられたのだと聞く。 当代 云々と評される役者の性とはそこまでのものなのか? 半年後、ご自身の奇跡的復活をルフィの台詞に被せて客席へと告げられる。 漫画 ” ONE PIESE ” は、希望の物語であるが、傷だらけの物語でもある。 満身創痍の復活劇を、ご自身に重ねられて演じられたのかもしれない。 また、市川右團次さんは、エドワード・ニューゲート役を演じられた。 別名 “白髭 ” は、海賊としての矜持を次世代に繋いでいくことを祈りながら果てていく。 これもまた、歌舞伎という古典をその身に受けて継いでいかねばならない自らの身上を想起させる。 … 続きを読む

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五百十二話 桜です。

今年も咲いて、散った桜。 ちょっとご披露しておきます。 京の北山に咲く桜。 そして、海辺の家に咲く桜。 ってことで、また来年に。

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