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六百二十八話 ひと夏の宴

海辺の街。 海水浴場は、七月一三日に “ 海開き ” が行われて、八月二七日までの四六日間ひとで賑わう。 嫁は、幼い頃、水着姿で浮輪片手に坂を駆け下りていったそうだが。 さすがに今は、そうした原住民の姿を目にすることはなくなった。 それでも、毎日見かける子供達の顔は、日に日に黒く日焼けしていく。 肌が白い異人の子は、 可哀想なくらい真っ赤だけど、気にする様子もなくそれはそれで元気そうだ。 みんな盛り上がって楽しそうに坂を登り下りしている。 月が明けて八月になると、浴衣を着せてもらった海祭りに向かう女の子も登場する。 こうして海辺に巡ってくるひと夏の宴。 電車で一〇分もすれば着く街中では暑さで皆辛そうにしているのに、なにがどう違うんだろう?  

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六百二十七話 ひとり神戸

気温三〇度、湿度九二%、曇天の港街をひとりでぶらつく。 まずは、腹ごしらえ。 南京町の路地裏にある “ 横丁 ” で鰻重でも喰うかぁ。 義父も通った一九四七年創業の老舗。 この店屋の段取は、注文を受けてから焼くのではなく、ある程度の量を予め焼いておく。 なので、焼き立てを望むなら口開けの今どきが狙いだ。 鰻重の大盛りを注文して待つ。 暖簾を潜って飴色に燻んだ店内に居ると、此処が中華街だということを忘れてしまう。 柔らかくとろけるような江戸前ではなく、身が締まって少し歯応えが残る鰻だがこれはこれで旨い。 喰い終わって、改めて今日はひとりだと気づく。 誰にうるさく言われることもなく、気兼ねすることもなく、言い訳する必要すらない。 食べたいものを食べたいだけ食べれるという好日なのだ。 ならば〆に蕎麦でも。 北長狭通をあがって、“ 道玄 ” に向かう。 美人の女蕎麦職人が打つ唯一無二の九一蕎麦。 たいした距離でもないのに、歩き着いた頃には汗びっしょり。 嫌な季節だ。 すっきりするには、酢橘の酸味か?おろし大根の苦味か?迷った挙句苦味に傾く。 辛汁の濃さ、鬼おろしの具合、削節の香り、すべてにおいて絶妙。 このモデルみたいな女亭主の蕎麦切りの腕前には、幾度食べても魅せられる。 また客筋も一筋縄ではいかない。 隣席の若い女性客が、小説を片手に注文する。 「二、三杯飲んでからにしたいんで、蕎麦の注文は後にしていただけますか」 平日の真っ昼間から?二、三杯?思わず顔を向けてしまう。 手にしている小説は、村上春樹先生の “騎士団長殺し” 不健全で難解な小説を読みながら削節を肴に日本酒を冷で呷るという趣向らしい。 涼しい顔をしながら、なかなかにドス黒い日常を過ごしているおねえさんを横目に蕎麦を啜る。 こうして、鰻に蕎麦と好物を渡り歩いて、腹も満たされ珈琲もいらない。 せっかく街中に出てきたんだから、無駄遣いがてら店屋を冷やかしにいこうかと思う。 しかし、汗で濡れた身体では試着も出来ないので服屋はやめておく。 TOA ROAD … 続きを読む

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六百二十三話 世界一、おめでとうございます!

  昨日に引続き World Baseball Classic 。 結局、中国戦から決勝戦となる米国戦の今日まで全試合を観ることに。 結果は、ご存じのとおり日本の勝利! 誰がどうでと語り始めたらおさまらない。 それに、そこまでの野球通でもないからやめておく。 でも、兎にも角にも対戦相手あってのこの歓喜なんだから、そこは感謝申し上げたい。 対戦各国の方々ありがとうございました。 ところで、Baseball bat 型の  pepper mill って代物が日本製であるらしい。 この際、記念に買っとくかなぁ。

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六百二十二話 花より野球!

二〇二三年三月二一日 海辺の庭に今年最初の桜が咲いた。 咲いたんだけど、朝から眺める間もなく野球観戦。 朝から野球観戦なんて人生初かもしれない。 World Baseball Classic 準決勝 Mexico 戦。 どうする?どうなる?の末に試合を決めたのは村神様。 これって最高かよ! そして、明日朝八時よりいよいよ米国との決勝戦に臨む。 どうする?どうなる? 侍 JAPAN の皆様、あしたもよろしくお願いしま〜す!        

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六百二十話 Snow Moon ?

2023年2月6日の満月は、特別なんだそうだ。 一年で、最も地球から遠く離れた満月で、ちいさく見える。 正確には、午前三時二九分がその刻なのだが、起きて待ってられないのでちょっと前に撮ってみた。 そもそも、月は、地球と等距離に正円軌道で公転していると、この歳になるまで信じていた。 それが、そうじゃないってことなのか? そして、 この月を英語で “ SNOW MOON ” と呼ぶらしい。 どっちも初耳だわぁ。 見た目にな〜んも変わらんから、それがどうした?って話だけど。            

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六百十五話 新しい年 

二〇二三年一月一日、海辺の元旦。 新年あけましておめでとうございます。 夫婦ふたりだけのお正月を過ごしております。 ふたりだけなので、最小限の飾付けと好きなものだけを詰めた “ おせち ” 。 朝風呂に浸かって、食って、食って、そして寝るという自堕落な年の始まり。 いいね! 皆様にとってこの卯年が、穏やかで良い年となりますように。

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六百十四話 God Save The Queen of PUNK!

430 King’s Road , LONDON . SW100LJ 倫敦 Chelsea 地区のこの通りから始まった長い旅路を今終えられた。 Dame Vivienne Isabel Westwood もっとも敬愛する方だった。 亡き盟友 Malcom McLaren を父に、 彼女 Dame Westwood を母に、“ PUNK Culture ” は産まれたのだと想っている。 混沌と狂騒の “ Worlds End ” が、あの時代、あの場所にあったことを忘れない。 天国では、Malcom と仲直りしてください。 May you rest in peace.

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六百十三話 Merry Christmas !

二〇二二年十二月二四日、海辺の聖夜。 今年の宴は、二度を予定。 まず最初に Santa Claus の代わりにやって来たのは、おばちゃん達。 みんな学生時代の同級生。 これだけの料理人が揃えば食いモノの心配はない。 元町東龍街 “ 劉家荘 ” の鶏丸焼と元町駅西口前に在る “ 四興樓 ” の豚饅はこちらで用意しておく。 ついでに中華街で縁起物らしい鳳凰の切絵も買ってきて洗面鏡に貼っといてやった。 あとは、小籠包やら  Stollen やらを持ち寄ってくれるのを待つだけ。 それにしても、小籠包や  Stollen をふつう家庭でつくるひといる? 蒸器を出せ!だの、流し型を出せ!だの、ウチは中華料理屋じゃないんだから。 と、思ってはいても口には出さない、おとなしく言われたとおりにするのが昔からの習わしだ。 だが、このひと達、口も達者だが腕も達つ。 蒸器から素手で小籠包を取出し、あっという間に、卓には間違いのない旨い皿が並ぶ。 凄ぇなぁ!台北屋台並の手際の良さだぁ!怖ぁぁぁ! こうして、海辺の Chinoiserie Christmas Party は、無事開催。 今年旅立たれた Queen Elizabeth II を敬慕して、女王の肖像を。 毎年恒例の手造りChristmas Tree 。 庭のヒマラヤ杉を使った Christmas Swag は、嫁の即席。 … 続きを読む

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六百九話 結陽ちゃん

庭のジプシー 橋口陽平君は、東京の大学に通うまで鹿児島で産まれて育った薩摩隼人だ。 先日、娘の結陽(ムスヒ)ちゃんを授かったばかりで。 数日前に庭の剪定作業にやって来た際にも、嫌というほど画像を見せられる。 産まれて二ヵ月で、拡大契約した画像保存可能枚数がすでに限界に達しつつあるらしい。 めくってもめくっても結陽ちゃんしかいない。 「もう連写モードのレベルだな、いい加減整理すれば」 「整理って、消すっていうことですか?どれを?」 「知らないよ、そんなの」 「でも、奥さん似で文句なく可愛いいな」 「はぁ? 䕃山さんよく見てくださいよ、どっから眺めても俺に似てますよね」 「いや、間違いなく奥さん似で 、この娘も美人になるな」 「俺、一〇月に San Francisco の金門橋近くで石積みの仕事を二週間請け負ってるんですよね」 「行きゃぁいいだろう、たった二週間だろ?」 「その間どうしましょう?」 「だから、知らないって!」 このおとこ、当分の間、近場仕事だけにしてジプシー業を廃業するんだろうな。 その定住志向のジプシーが、家族で結陽ちゃんをお披露目にやって来た。 「どうですか?可愛いですよねぇ」 「どうですかって、散々画像見せられて知ってるよ」 「動くんですよ」 「いや、知ってるから、動画もいっぱい見たから」 抱いて上から眺めていると、確かにこの娘は可愛い、まぁ、こうなる気持ちもわからなくもない。 「鹿児島のお爺さんもさぞ喜んでおられるんじゃないの?」 「すぐ鹿児島からやって来て、大騒動ですよ」 「薩摩隼人は無口だって、あれ大嘘ですよ、ずっと結陽相手に喋りまくってましたから」 「あっ、そうそう、これその親父が育てた栗なんですけど、良かったら食べてみてください」 鹿児島は、栗の産地としてはあまり知られていない。 しかし、県境を接する熊本県山江村では、最高級の栗が採れる。 その昔、年貢米ならぬ年貢栗として納めていたほどだ。 同じ土壌、同じ風土の県境付近の鹿児島側でも栗を育てるひとは多いらしい。 “ やまえ栗 ” に劣らず “ 霧島栗 … 続きを読む

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六百八話 神戸徘徊日和

二〇二二年九月一〇日、今年はこの日が一五夜となる。 海辺の家で、観月の宴会でもと思い声をかけたのだが、集まりが悪く中止。 仕方ないので、夫婦と友人ひとりを伴って街中をうろつくことにする。 旧神戸 UNION 教会堂を改築した “ Cafe FREUNDLIEB ” へ。 昼飯を sandwich で済ませ、北野町界隈の異人街に向かって歩く。 大学時代、嫁は市役所に雇われて観光客に異人館を案内するバイトをしていた。 その縁で、此処が遊び場となっていた時期がある。 震災後、雰囲気は随分と変わってしまったが、食と飲みでのこの街独特の流儀は消えてはいない。 幼馴染、先輩後輩、隣人とのローカルな関わりを立場、年齢、人種を超えて何より重んじる。 極めて排他的ではあるものの、住人にとってはそれが心地良いのだろう。 なので、どんな洒落た造りの店屋であっても、家にいるのとたいして変わらない格好で客は集う。 気取らず普段着で近場の店屋にやって来て。 居合せた顔見知りと毒にも薬にもならない話題で盛り上がって、たらふく食って飲んで帰って寝る。 まぁ、これが神戸人の目指す理想の暮らしぶりで、この実践に向けて日夜励んでいる。 「俺、産まれてこのかた頑張ったことないから」 ほんとは四苦八苦していても、この台詞だけは取り敢えず言っとかねば明日は来ない。 あれほどがめつい中国人でも印度人でも、二代三代とこの街に暮らし続ければただの腑抜けだ。 緩くて、阿呆で、したたかな港街。 Cafe FREUNDLIEB を後にして、途中、The Bake Boozys で翌昼飯用ミートパイを嫁が買うと言う。 ミートパイにとどまらずあれもこれもを鞄に詰めて歩くことに。 神戸ハリストス正教会脇の路地坂を登って、 神戸 Muslim Mosque までやってきた。 この日本最古のモスク周辺には、ハラル料理屋や食材店が並ぶ。 最近、そのモスク前でトルコ人がトルコ料理屋を始めたらしい。 “ … 続きを読む

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