六百六十四話 送り火

二〇二五年八月一六日の送り火です。
今年のお盆は賑やかだった。
母の初盆であった事に加え、引越を機に本宅の仏壇がやってきて海辺の家には仏壇が二基。
もともと居た義理の父母と越してきた両親。
両家の親が久しぶりに顔を揃えて、ひと所でお盆を過ごすことに。
なんか、これはこれで良い感じかもしれない。
嫁とは一〇代からの付合いだったこともあって、親同士異様に仲が良かった。
あの時のこと覚えてる?
昨日、嫁が、四十年ちかい前の思い出さなくてもいい噺を思い出した。
結婚前年の暮れ、当時二八歳の頃、欧州出張中に自宅に居た嫁と電話で話す。
「ねぇ、ちょっと訊きたいんだけど、アンタさぁ、わたしと結婚するつもり?」
「このままだと、流れ的にそんな感じじゃないの?で、なんで今?なんかあった?」
「いや、それがさぁ、昨晩遅くにお父さんとお母さんが家に来られたのよ」
「はぁ?なにしに?俺が留守中になにやってんの!」
「えっ?知らないの?御宅のご両親、アンタが海外出張中よく家に来られてるよ」
「知らないよ、親とかと喋らないし、冗談だろ?なにそれ、言ってよ!」
「まぁ、それは良いんだけど、昨晩の噺は流石にそうもいかないと思って」
「なんなん?そうもいかない噺って」
「付合って一〇年になるけど、あの馬鹿息子に任せてたらいつになるか分からないからって」
「一緒にさせようかって、お父さんが」
「無茶苦茶だな、それ!で、どう返事したの?」
「わたしは、その馬鹿、じゃなくって、息子さん本人からなにも聞いてませんけどって言った」
「馬鹿は余計だけど、真っ当な返答だわ、それで?」
「言ったんだけど、誰も聞いてない、親同士盛りあがってそれは良いじゃん!みたいな」
「うちの親はもちろんだけど、御宅の親もどうかしてるよなぁ、ひとり娘の一大事だろ?」
「アンタだってひとり息子じゃん、馬鹿だけど」
そんなやりとりがあった部屋に、今、こうして二基の仏壇が並んである。

いつまでも騒いでないで、送り火炊いたんだからもうお開きですよ!

 

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