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四百九十七話 泥棒の隠れ家

ちょっと描いてみた。 一九八〇 年代、香港の夏。 STANLEY の中国名は「赤柱」 泥棒の隠れ家という意味なのだそうだ。 あの頃、Market Road の路地裏には、まだこんな壁が残っていた。 Chinatown に咲く百合。 こんなだったか?どうだったか?今そう問われても、もうよくは憶えていない。 ただ、怪しくて淫靡な感じだけは、妙にあたまに残っている。 まぁ、それだけのことなんだけど。  

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四百九十六話 終了!

終わったぁ〜。 終わりました。 二月にすべての営業を終えた後、半年経った。 その間、法人解散の手続きに衰えた能力を絞って取り組んできた。 そして本日、ようやく完了の運びとなりました。 結果、店主として、事業主として、清算人として、その役割を終えたことになる。 勝った負けたの話ではないけれど、無事に成ったことに正直安堵している次第です。 さぁ〜て。 祈願の達磨に目を入れて、眼前の山中にある勝尾寺に納めにいくかぁ。 達磨さんにも、関わっていただいた皆さんにも感謝です。 ありがとうございました。 まぁ、こんなとこかな。  

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四百九十四話 もうひとりの座頭市 

六本木歌舞伎の第二弾、座頭市。 寺島しのぶさんって尾上菊五郎さんのお嬢さんだけど、歌舞伎の舞台に女優? 盲目の座頭市を演じられるのは市川海老蔵さんだとすると、あの眼力は? 映画 SCOOP! の薬中オヤジ、リリー・フランキーさんが歌舞伎の脚本? その存在自体が R-15 指定、鬼才三池崇史監督が演出? これで、ほんとうに良いの? だけど、これほどの個性と才能を布陣させて挑んだ芝居となると是非観てみたい。 で、大阪公演の初日に観た。 歌舞伎にも通じていない、芝居にも通じていない。 そんな僕が観ても、とにかく面白い。 盲目の侠客座頭の市は、故勝新太郎さんが役者人生を賭けて演じ続けられた役柄だ。 以降、どなたが市を演じられても、どうしても大好きな勝さんの立居が浮かぶ。 そして、これが座頭市?という想いしかなかった。 逝かれてちょうど二〇年経ったこの舞台で、まったく異なる市の姿を観た。 坊主頭で、ひとの動きを超えた抜刀術で斬って舞う盲目の侠客。 見えるはずのものが見えず、見えないはずのものが見える。 朱の衣を羽織って洗練されてはいるけれど。 これは、もうひとりの座頭の市だ。 当代随一の歌舞伎役者って、こんなにも凄い者なのか。 芝居の最中、時々に演者が客を弄る。 幕間ですら、なにかと絡んできて飽きさせない。 歌舞伎役者とは、ひとを楽しませるあらゆる術を心得た玄人中の玄人だと想う。 あっという間の二時間半だった。 明日ご覧になられる方もおられるかもしれないから、詳しくは言わない。 ただ、寺島しのぶさん演じる薄霧太夫との濡場の一幕も必見ですよ。 三池崇史演出六本木歌舞伎、これは病みつきの芝居だ。 三池監督、煙草場では失礼いたしました。

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四百九十二話 どっちの BABEL が好き?

これが、Boijmans Van Beuningen 美術館収蔵のPieter Bruegel 作「BABELの塔 」 今、国立国際美術館にいる。 さらに。 これも、Pieter Bruegel 作「BABELの塔 」 多分、Wien 美術史美術館にいる。 もうひとつ、Pieter Bruegel 作「BABELの塔 」はあったらしいが。 今、どこにいるのか誰も知らない。 ふたつの「BABELの塔 」 で、どっちの BABEL が好き? まぁ、一般人にとっては、どっちでも良いはなしなんだけれど。 中世西洋美術愛好家の間では、意外と真面目に交わされる論議のひとつでもある。 なにが違うか? まずは寸法が違っていて、面積比で Wien 美術史美術館収蔵の方が五倍ほど大きい。 そこで、「大BABEL」と「小BABEL」と呼んで二作品を区別している。 そして、「大BABEL」を観てから二〇年以上経った先日「小BABEL」を初めて観た。 僕は、ある期待をPieter Bruegel 作品に抱いて観る。 くだらない下衆な私見だが。 西洋美術史上でも指折りの謎とされる奇妙な美術が、一五世紀の和蘭陀に出現する。 全くもって Surrealism だとしか言いようのない存在なのだが。 … 続きを読む

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四百八十九話 やっぱり頼みは、稲荷大明神!

嫁に付合って京都山科で午前中の用事を済ませた後だった。 「近くだから、御稲荷さんの顔でも拝んでいく?」 「わたしお参りしたことないんだけど、伏見稲荷って商売の神様じゃないの?」 「商売やめて、伏見稲荷ってどうなの?」 「まぁ、それもそうだけど、参ったことがないっていうのもまずいんじゃないの?」 「無事に商ってこられた御礼がてら行こうよ」 伏見稲荷大社には、関西を始め全国の商人にとっての守護神が祀られている。 この国には、お稲荷さんと呼ばれる神社は三万社を超えて在る。 その全てのお稲荷さんを束ねる総本宮が、此処伏見稲荷大社だ。 一三〇〇年経った今もなお、商売繁盛・五穀豊穣を祈願するひとは後を立たない。 本殿に参って、千本鳥居へ、嫁が妙なことを言い出した。 「この千本鳥居 って、ほんとに千本あんの?」 「そりゃぁ、千本以上はあるんじゃないの、これが稲荷山の山頂までずっと続くんだから」 「ええっ!マジですかぁ!で、稲荷山って何処にあんの?」 「此処だよ!この鳥居を際限なくくぐって山頂へと登っていく訳よ」 「凄いねぇ、じゃぁ、行こうよ」 「う〜ん、ちょっとした登山だから無理じゃないかなぁ」 「って、ひとの言うこと聞けよ!」 説明も忠告もなにも聞かずもう登り始めている。 稲荷山は、伏見稲荷大社の神体山で、二三三メートルほどの標高である。 たいした標高ではないが、それでも山は山だ。 二度ほど連れられて登った記憶だと、九〇分ほど石段を登り続けたような。 意外ときつい。 一〇分おきくらいに茶店が在って、茶店毎に登るのを諦めたひとが引き返していく。 四〇分ほど登りつめると、四ッ辻に着く。 視界が一気に開け、洛中が一望できる中腹地点だ。 たいていの参拝者は、この眺望を土産に引き返すみたいで。 「さ〜て、俺らも戻るかぁ」 「だから、ひとの言うこと聞けって!」 嫁には、この眺望も単なる通過地点に過ぎなかったようで、さらに登っていく。 「あんた、なんか狐かなんかに憑かれてるんじゃないの?」 一 時間を過ぎると、膝というより股間が痛い。 麓でごった返していた参拝者も、今はもう数えるほどしかいない。 しかも、白人四人、中国人一人、どっかの浅黒いのが二人といった具合で。 日本人は、我々だけ。 どうやら外国人は、参拝者ではなくアニメ・オタクみたいだ。 伏見稲荷を舞台にした作品の聖地になっていて、その筋では海外でも広く知られているらしい。 ようやく、一 … 続きを読む

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四百八十八話 まさかの同居人! 其の参

ひつこいようで申し訳ありませんが、四百八十七話からの続きです。 捕獲撃退作戦の要領は、こうだ。 まず、天井にいくつか点検口を設ける。 そして、屋内の子供連を燻煙剤で追い込み捕獲する。 次に、授乳のために通って来る親が屋内に進入できないように全ての床下通気口を塞ぐ。 さらに、念のため点検口に忌避剤を置く。 これら作業を、親の居ない昼間に完了しなければならない。 嫁に大工を加えた五名による人間対正体不明の獣との最後の闘いだ。 午後〇時ちょうど作戦開始! 客用寝室と玄関の天井に点検口設置用の穴を開け始める。 音に怯えてか、寝室の天井裏から鳴き声はするのだが、移動の気配はない。 開けた穴から、懐中電灯で照らし内部の様子を探ってみた。 梁の下の空間から鳴き声は聞こえるが、梁が邪魔して姿は確認できない。 やはり燻煙剤を投入して、追い出すしかなさそうだ。 先に点検口を付けて燻煙剤を仕込み扉を閉じる。 煙が充満し始めたと同時に、ギャーギャーという鳴き声がして、バタバタと動き回る音が響く。 音は、西の玄関方向へ。 よ〜し、作戦通りの行動で、玄関に設けた点検口で待ち受ける。 あれ?来ない?鳴き声もやんだけど?どこ行った? しばらくすると、 途中にある応接間と玄関とを仕切る壁内部から気弱な鳴き声が。 壁の間に落ちやがった! 「どうします?」と訊く棟梁に。 「いいから!壁ぶち抜いて!」 「えっ?マジですか?本気ですか?」 「冗談こいてる場合かよ!捕まえるためにはなんだってやるんだよ!」 「了解!だけど電気ドリルは使わず手作業で抜こう!怪我するといけないから」 「あのなぁ、オメェいったいなんの心配してんだよ?どっちの味方なんだぁ?」 壁に五〇センチ四方の穴を開けた。 全員手に棒を持ち周りを固めて、火箸を手にした棟梁の動きを見守る。 「デカッ!なんだぁ!コイツ?あっ!二匹いるぞ!なんか箱を!早く!」 そうして遂に、火箸に挟まれて穴から出てきた敵の姿を全員が見た。 騒動の主は、イタチでも、ハクビシンでもなく、アライグマだった。 「嘘ぉ〜、どんだけ可愛いねん」 皆棒を捨て、代わりに手にしていたのはスマホ。 で、撮った写真がこれです。 聞くところによれば、アライグマは、一度の出産で三匹から六匹の子を産むらしい。 見つかったのは二匹、他に?どこかに?まだ? 客用寝室の片付けをしていた大工のひとりが、なんか鳴き声がすると言う。 先程の梁下で、垂れ壁の内部だ。 … 続きを読む

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四百八十七話 まさかの同居人! 其の弐

四百八十六話からの続きです。 得体の知れない同居人との闘いは、その後二〇日間に及んだ。 その間ずっと海辺の家に居たわけではないが、離れていても気になってしょうがない。 なので、頻繁に通う。 どうやって追い出すか? そもそもどんな性分の輩なのか? 鳴声だけが頼みなのだが。 それぞれを聞き分けて、何匹いるのかがわかるほどに耳慣れてもいない。 ただ、家にはこどもだけが居て、親は通いで育てているらしい。 こうして正体も何も分からぬままに、捕獲及び撃退作戦開始! まず庭師を呼んで、親が出ていった隙に床下の通気口をステンレス製の網で塞ぐ。 授乳の時間帯は深夜から明方のようなので、作業は夕方に終えて様子を窺う。 草木も眠る丑満時。 ガサゴソ、バタバタと、明らかにこどもの動きとは異なる音が響く。 親だ! どうやって侵入したのか? 翌朝、塞いだ通気口を見にいく。 ステンレス製の網は、見事に引き破られている。 ふ〜ん、なかなかやるもんだ。 今度は、大きな座金に変え壁に網をネジ留めした。 さらに、網の前面にレンガとブロックを積む。 結果は? レンガやブロックを蹴散らし、網も破られ、こどもは腹一杯乳を飲んでご機嫌で騒いでいる。 くそ〜、なめやがって! こうなったら、こっちもガチだ! 二〇キロ近い重さの礎石四枚を、網の前面に敷く。 勝敗は? 完敗!!! さすがに蹴散らされてはいないが、引きずるように礎石はどかされ、網は破られ侵入。 二〇キロ近い礎石を動かせる腕力を備え、床下を這い、内壁を登り、天井裏をゆく。 こいつ、ほんとにイタチなのか? もう、ここまでいいように振舞われると。 ホモ・サピエンスとしての誇りは打ち砕かれ、マジで怖い。 これは、庭師だけでは手に負えない。 大工も投入して、家を潰す覚悟で戦いに臨んでやる! 棟梁を含む大工三名が参戦。 イタチですかぁ、大変でしょ、寝れないですよねぇ、まぁ、追出すしかないですよね。 とか、余裕ぶっこいていた大工に、携帯で撮った侵入路の写真を見せた。 えっ?これ何者?こんなもの動かせるイタチなんかおらんでしょ?怖ぁ〜! おいおい、腰引けてんじゃねぇよ!おたくらが、最後の砦なんだよ。 … 続きを読む

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四百八十六話 まさかの同居人! 其の壱

ようやく法人解散の手続きにも終わりが見えてきて。 海辺の家で一息入れることにした。 庭仕事を終えて床で寝んでいると。 ガサガサと音がする。 場所は、一階と二階の間にある隙間からで、明らかに何者かがそこにいる。 真夜中に得体の知れない者の音だけを聞くのは、かなり不気味で怖い。 嫁とふたりで階下に降り、一階の天井を棒でちょっと突いてみた。 ガサッという擦れるよな音に加えて、ピィーという微かな鳴声が聞こえる。 「ふざけないでよ!なに?だれ?」 「何時だと思ってんの!やめてよ!」 で、力一杯ドンドン突いた。 これが、いけなかった。 バタバタ、ギャァギャァ、近所にも響きわたる騒音に変わる。 こうなると、相手もパニックだが、こちらも相応にパニックに陥る。 ドンドン、バタバタ、ギャーギャー、明け方までずっと続く。 海辺の家で一息どころか、ここ最近の運動量としては限界に近い。 「もうやめよう」 「イタチだな、これだけやれば身に危険を感じて出ていくんじゃないの」 「とにかく、庭師を呼んで追い出して、進入路を塞げばいいじゃん」 こうした人間の浅知恵が通じるような相手ではなかった。 写真は、イタチなのだが。 固定資産税の一文も払わず、海辺の家で子を産み、不法に居座っている輩はこいつではなかった。 もっとヤバくて、厄介な無法者との長い闘いの幕はこんな感じで開いた。 続きは、四百八十七話 其の弐で。

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四百八十五話 奮闘中!

桜の花が散って。 こうして、藤が垂れてもまだ終わらない。 ほんとうに面倒臭い。 法人解散というなんの生産性も伴わない作業に没頭している。 賢い先輩から。 「そんなもの休眠させて、放っとけばいいじゃん」 まぁ、それはそうなんだろうけれど。 この法人は俺が創ったものでも始めたものでもない。 先代の親父から継いだものだから、中途半端に投げ出すのも寝覚めが悪い。 事業会社の解散も、ひとの葬儀も似たようなものだと想う。 ちゃんと始末をつけなければ。 だけど、もうちょっと楽にやれるようにならないものか? この国には九〇〇〇〇社ちかく営業実態のない会社があるというのも頷ける。  

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四百八十四話 桜は咲いたけれど

海辺の家に桜が咲いた。 咲いたけれど、見上げて愛でる余裕もへったくそもない。 こんな blog を書いてる場合でもない。 Musée du Dragon の閉店に続き、一年後のこの二月で百貨店に在った店舗も閉じた。 これで事業会社として全ての営業活動を終えたことになる。 円満に事が運んで良かったのだが、問題はその後である。 役目終えた組織を解散させなければならない。 大変だと聞いていた以上に大変だ。 会計士や司法書士の先生方に。 ここまでは、経営者としてちゃんとやりなさい、後は僕らが責任を持って処理するから。 落ち着いて、ひとつひとつ手順通り進めていけば出来るのだそうだ。 って、クソ面倒臭ぇ〜。 大体なんで俺が、この歳になって。 駈出しの公務員のおにぃちゃんやおねぇちゃんに。 「はい、ここにこの事項を記載してくださいね」 「あっ、そこ間違えてますよ」 「さっきも言いましたよねぇ」 「判子は持ってきましたか?」 うるせぇよ!小学生じゃねぇぞ!やりたいようにやらせろ! 「駄目ですよそういうのは、お絵描きじゃないんですから」 人には、向き不向きがあるのだ。 自分の年金額も知らないおとこに、社会保険がどうのこうのって言われても。 無理だ! こんな事なら、自分でやるなんて言わなきゃ良かった。 もう、やめるのをやめたい。

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