四百五十一話 日陰の庭?

Paul Smither という庭師がいて。
この景色は、彼の手による。
英国Berkshireに生まれた庭師は、倫敦郊外のWisley Gardenや米国Longwood Gardensで園芸を学び。
一九九七年、有限会社Garden Roomsを設立し、庭の設計施工を日本国内において手がけている。
園芸業界では、かなり名の知れた庭師だ。
Paul Smither氏の作庭に興味を抱くようになってから、もうずいぶんになる。
本が出版される度に買込み、真似られることは真似てみたりもした。
真似始めて一〇年ほど経った庭を眺めると、なんとなく様になりつつあるような気もする。
義母から託された海辺の家の庭は、ちょっと変わっている。
深く窪んだ下段の庭、狭く細長い中段の庭、テラス状に平たい上段の庭という具合で。
おおよそ三段に積まれたような地形をそのままに庭だと言い張ってきた。
なんとなく様になりつつあるというのは上段の庭で、中段や下段には未だ手をつけていない。
ちょっと時間的余裕もできたので、いよいよ下段の庭も整えようかと考えている。
斜面も勘定すると四〇坪ほどの下段の庭は、あまり作庭に適した環境ではない。
三分の二程度が濃い日陰となっていて、薄暗い。
樹齢一〇〇年を超える下段の山桃や、家全体を覆うまでに育った中段の桜の仕業だろう。
もはや木陰などという洒落たものではない。
何者か?よからぬ生物が出てきそうな雰囲気ですらある。
日陰の庭?
家のどこかにあったはずの一冊が頭に浮かぶ。
「日陰でよかった」
表題そのままに、日陰に於ける庭造りを指南した内容となっている。
著者は、Paul Smitherだ。
淡い日陰から濃い日陰まで、段階別に植生を紹介し、土壌の改良法から設計までが記されていて。
まことに心強い。
師曰く。
日陰こそが、庭を素晴らしくするのだ。
マァ〜ジですかぁ?

その言葉を糧に、ひとつ Shade Garden なる日陰の庭に挑んでみようかぁ!

 

 

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