五百五十五話 海峡の秋

先に申し上げておきますけど、禄でもない話なんで食事時含めその前後はお避けください。

でない!
ぜんぜん、でない!
嫁に相談してみた。
「ねぇ、ぜんぜん、でないんだけど」
「なにが?」
「うんち」
「知るかぁ!」
水分を摂って、酸化マグネシウムを服用しても、効果なし。
来客もあって、昼から晩までずっと飲んで食ってを続けた挙句のこの始末。
「やばいなぁ、おなか、カッチンコッチンに硬いんですけど」
「食欲もないし」
「俺、ヒヨコだったらすでに逝ってるかも」
「はぁ?ブロイラーみたいな身体して、生意気なこと言わないで!」
「運動不足なんじゃないの? ちょっと歩けばなんとかなるんじゃないの?」
なるほど、そうなのかも。
散歩なんて別に好きでもなんでもないけれど、そうも言っておれない。
坂を下って、国道を渡って、浜辺にでて、西へと歩いて、舞子に。
対岸に浮かぶ淡路島とを繋ぐ明石海峡大橋の袂まできた。
そこで、この世界最長とされる吊橋なんかを撮ってはみたものの、まったくでる気配はない。
仕方がないので、さらに西へ。
これで明石まで行って目的が果たされなければ、JR か 山陽電車で帰るか。
絶好の 秋日和に、瀬戸内の海峡を眺めながら浜辺を歩く。
結構な趣向なのだが、頭のなかは “ 排便 ” の二文字のみ。
舞子公園を越えて西舞子辺りで。
腹が、なんかこうシクシク痛い。
いよいよかぁ! 遂にきたのかぁ!
数メートル歩くと、前に屈みこむくらいに痛い。
間違いない、その時が近づいている。
よし、産むぞぉ!
が、しかし、問題がひとつ。
どこで???
たしかこの辺りは、店屋が途切れていたような。
前屈みに慌てて国道へと戻る。
やっぱりない!
絶望の果てに、あらぬ行為がよぎったその時、見慣れた看板が目に入った。
“ STARBUCKS ”
現状では、ちょっと厳しい距離感だけど頑張るしかない。

そして、こんな事でもなければ、訪れることもなかった無駄にお洒落な STARBUCKS にたどり着く。
海峡を挟んで島を一望できるソファー仕様のテラスにも、Frappuccino にもなんの用もない。
用があるのは、一階の便所だけ。
おかげさまで、なんとか無事用が足せました。
ようやく落ちついた心地で、二階のテラスで珈琲を飲みながら海峡の秋を眺める。
とんだことで浜辺を歩く羽目になったが、たまにはこうして過ごすのも悪くないと想う。

それにしても、便秘には歩くのが一番効く。

 
 

 

 

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