ご無沙汰です、このところちょっと忙しいもんで。
思ったより大変だわぁ。
七〇年近く経った家を改築するのは。
建築家の先生からも。
「新築された方が、費用的にも精神的にも楽にやれますよ」
「でも、改築の方向で進められるんですよね」
「うん」
「えっ? 聞こえない、そうなんですよね?」
「はい!そうです!」
とは、答えてはみたものの、具体的に話が進み始めると段々と不安になってくる。
世の中、七〇年も刻が経つと、ほとんどの事象が姿を変えてしまう。
建築もそうだ。
構造から建材まで、あらゆることが昔とは違う。
世間的には、七〇歳を過ぎた木造建築に価値などない。
ひと言で言ってしまえば、我楽多だ。
その我楽多を解体し、使えるものを拾い出し、修繕し、組立直す。
場合によっては、用途を違えてでも使う。
床材を壁面に、食器棚に嵌めらた硝子を扉にとかいった具合で。
その度に構造的に大丈夫か? 修繕は可能か? 面積的に足りるか?など。
いちいち検証していかなければならない。
家全体が、複雑なパズルのように思えてくる。
もちろん、どうしても足りないピースもあって。
例えば、いくつかのドアノブは使えるけど、必要な建具の数には全く足りない。
同じ年代の真鍮製のを購入すれば済むのだけれど、その販売先は?
そんな面倒が、床から壁から天井から建具へと続く。
こうしてお伝えすると、どんな文化財的に価値のある館なんだと想像されるかもしれない。
自信をもってお答えします。
“ 海辺の家 ” は、自他共に認める立派なただのボロ屋です。
建築家の大先生が言うには。
「まぁ、ねぇ、家の価値観は人それぞれだから」
って、アンタも腹中で、我楽多だと思ってんじゃねぇか!