四百二十八話 節目節目に

うゎぁ〜、これが、Flower Artist 東信の花なのかぁ。
写真でしか見たことなかったけど。
巴里の Colette を飾り、Cartier 現代美術財団では Art Performance を披露するなど。
今、世界がもっとも注目する華道家である。
その作品が眼の前にあって、お陰で店は妖しく華やいでいる。
この花は、東京南青山に在るお店で注文されたのだそうだ。
“ Jardins des Fleurs ” という名の花屋には、一輪の花も置かれていないと聞く。
完全注文制で、花の Haute Couture として営まれている。
花を抱いて家族でお越しくださったのは、Musée du Dragon の初期頃から通っていただいた方だ。
御主人も奥様もおふたりとも大切な顧客様で。
二〇年前といえば。
美男美女のおふたりが、大学生の頃にお付合いされていた時分だったんじゃないかなぁ。
仲良く連れ立って、よく来店されていた。
貴重な花はもちろん有難いし嬉しい。
でも、こうして二〇年経った今、幸せに立派に暮らされている姿を拝見するのはもっと嬉しい。
大学卒業
就職
御結婚
出産
結婚記念日
など。
人生の節目節目に Musée du Dragon が、在ったのだと告げられて。
花には “ 感謝 ” の二文字が添えられている。
これでも玄人の端くれですから、店先で面は崩しませんけど。
そりゃぁ、胸に迫りますよ。
自分が、街場に在る一介の服屋の亭主に過ぎないことは重々承知している。
しかし、そんな服屋にでも冥利というものがあるのだとすれば。
それは、この一事に尽きるのだと想う。
Musée du Dragon を続けてきて良かった。
改めて、そう想いますよ。

ほんとうに、ほんとうに、ほんとうに有難うございました。

 

 

 

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