三百八十五話 泉州の地場野菜

“ 職に貴賎はない ” と言うひともいるけれど。
それは、やはりあるのだと思っている。
ひとの生命と直に関わる職業に就くというのはそれだけで尊いような気がする。
医者もそうだが、農家もそのひとつだろう。
なんせ、喰うものを喰わないとひとは生きてはいけない。
こういう稼業では、適当にやっておればなんとかなるという横着な考えは通用しない。
若手農家として活躍されている顧客の方がおられる。
これは、その顧客さんが丹精込めてつくられた野菜で。
とても上等な野菜である。
春にも頂戴して、この度は夏野菜という贅沢な旬を届けて戴く。
トウモロコシ、ズッキーニ、ピーマン、トマトなど。
朝採野菜がいろんな種類で沢山にある。
並べて眺めてみると、美しく、力強く、艶やかだ。
「これだけのものを育てられるとなると大変なご苦労じゃないですか?」
「えぇ、まぁ、朝から晩まで正直大変です」
「だから安く売るのはどうしても納得出来なくて」
そりゃぁ、そうだろう。
ご苦労の詳しい中身は分からないが、大変であろうことくらいは想像がつく。
誰だって、掛けた手間に見合った対価が欲しい。
だが、この国の農業政策はどこか不完全で、いつも生産者が割を喰うようにできている。
そこで、自分が育て収穫した作物は自分で売ろうとなったらしい。
力強い味方も現れた。
南海電気鉄道株式会社、大阪南部地域で鉄道事業を中核として発展してきた企業である。
難波駅構内に、沿線が抱く農村部で採れた地場野菜を販売する店舗を常設するというのだ。
沿線農村部活性化事業への取組みが、今月から始まる。
生産・流通・販売は地元の農家が担い、店舗を提供し集客を担うのは鉄道会社らしい。
どこぞの駅ナカやデパ地下の貧困な発想とは違い、真っ当で素晴らしい企みだと思う。

当日泉州近郊の畑で収穫された朝採野菜を、新進気鋭の若手農家が自ら運搬し対面で客と向き合う。
ちゃんとした野菜とはどういったものなのか?
此処を訪れればそれが分かるのかもしれない。
その泉州ブランド野菜直売所 「 Vege Sta. 」は、南海電鉄難波駅二階改札内に在ります。
そして、◯ に “  ” と記された野菜を手に取ってみてください。
ねねや ” という屋号で、弊店の顧客さまが育てられた野菜です。
味は、先に喰った僕が不肖ながら保証いたします。

ごちそうさまでした。
そして、この試みが成功し全国の駅に広まりますように願っております。

 

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