五十八話 HUNTER PANTS by Kiminori Morishita

⎡お前の店、シーズンの終わりかけになると弾切れの鉄砲みたいだなぁ⎦
人が気にしている事をずけずけと言ってくれる。
顧客の方なんだけど。
まぁ、あなたにお買い上げ戴いた結果でこの始末なんだけどね。
と、面と向かって答える度胸は欠片もないので黙っている。
が、今年からはそうはならない。
馬鹿でも十五年やってりゃ学ぶ事もある。
Musée du Dragon 十五周年記念のトリとなるアイテムをご案内します。
また、トリであると同時に新年二〇一二年から始める⎡BOTANIC HUNTER⎦の第一弾でもあります。
⎡いい歳して、何入れ込んでんの?⎦と言われても何なんで、始めさせて戴きます。
トリをお願いしたのは、08 SIRUCUS デザイナー 森下公則氏。
PARIS COLLECTIONを務めたその腕に頼る。
狙いは、最上の履き心地をして、最新のシルエットを誇る、最強のボトム・ウェアー。
僕は自分がやらないで人に頼む時、言いたい放題言うことを信条としている。
理由はその方が得だから。
⎡解りました任せて下さい⎦
後は例によって丸投げ。
そして、本日仕立て上がったのがこの⎡HUNTER PANT⎦
素材は、英国羊毛とポリエステルという対極の組み合わせ。
シルェットは、緩やかなジョッパーズでありながら、可動ストレスはない。
仕様は、これまたジョッパーズでありながら、アーミー・ポケットが側面にある。
挙句に、この⎡HUNTER PANT⎦はリバーシブル。
全く性格の異なる素材で、表裏なく両面着用可能としている。
最上の履き心地については完璧。
最新のシルエットについては見ての通り。
最強については他所との話なので絶対とは言えないけど、劣るという事はないだろう。
リバーシブルについては頼んでないけど、本当にそうなっている。
何より気に入ったのは、このパンツの持つ複雑な表情にある。
伝統的な素材に革新的なシルエット。
見た目の重厚さと実際の軽量感。
仕立ての技法と軍物の仕様。
天然繊維と合成繊維。
相反する要素をこれだけ重ねても、嫌な奇抜さはなく落着いている。
やっぱり森下公則氏のデザインは一筋縄ではいかない。
⎡ Greatest Botanic Hunter ⎦ 第一弾。
どうよ?
Musée du Dragonが、弾切れ前の本年最後に放つ一発です。

この写真ですけど。
なんか長崎に在る“ 卓袱料理屋 ” の座敷で脱いだような感じでしょ。
解んないですよねぇ。
“ 卓袱料理屋 ”って言われても、龍馬伝でもご覧下さい。

カテゴリー:   パーマリンク