
どっちも着なかった。
Down も嫌いだったし Vest も嫌いだった。
Down はあの中華ハムみたいな格好が気に喰わない。
Vest は中に着るならまだ解るが外衣として着るというのは意味が解らない。
この人暑いんだろうか?寒いんだろうか?
長年そう思ってきたのでどちらも着なかったし創らなかった。
昨年までは。
Over the Stripes の大嶺君が創った Mouton Vest があまりに馬鹿馬鹿しくて面白かったので買った。
そして、ひと冬の間 “マタギ” と罵られながらも着てみる。
すると、これが中々に優れものであると気づく。
まず Vest なので当然の事ながら袖が無い。
袖が無いというのがこれほど可動ストレスを感じさせないものなのかと驚く。
お前は素人かっていう話なんだが正直動き易い。
防寒という点でも意外と使える。
体感温度は身体の部位によって異なるのだが上半身では胸周りを暖めると良いらしい。
だとしたら、T−Shirt に Vest という着方は一概に間違っているとも言えない。
Outdoor Sport などで Layered System とかいう服の着方がある。
要は脱いだり着たりする事で体温を一定に保つ方法なんだろう。
この点でも Vest は重宝する。
⎡いやぁ〜、なかなかに使えるよなぁ⎦と言う事で今期はいろんな Vest を揃えてみた。
Roar に Backlash に Mastermind Japan に Over the Stripes そして 08 Sircus と。
⎡ 着てみるとVest って良いですよぉ⎦
⎡知ってるよそんな事は、あんたは今まで着ないから知らなかっただけだろう⎦
ほんとにうちの顧客の方々は可愛くない。
奥様方の顔を見たいもんだと思うが、これが皆揃いも揃って美人で聡明でいらっしゃる。
実に面白くもない。
まぁ、Vest の効能を事前に知っておられたお陰でよく売れるのは有難いんだけど。
ここで Musée du Dragon の理想とする Vest として 08 Sircus をご紹介させていただく。
羊毛と麻を混ぜたツィード素材を前身頃にナイロン素材を後身頃にと前後を異素材で切換えている。
独創的な仕様で取付けられた大型のポケット。
前身頃のボタンを外すと、そこにはもうひとつのポケットが現れる。
そして強縮絨を施したボアのようなニットがショール・カラーを覆う。
ホワイト・ペイントのトグル釦やデザインの異なるヴィンテージ釦。
容量を心得た上質ダウン・パックはシルェットを損なわず全体をスリムに整えている。
これなら中衣としても外衣としても着れるし、中華ハムみたいにはならない。
よくもまぁ、Down Vest ひとつをここまで凝って創れるもんだと感心する。
08 Sircus の森下公則さんってずっとこんな事ばっか考えてるのかなぁ。
デザイナーも他人を真似ている段には楽な稼業だが独自の創造を目指すとなるとなかなかに辛い。
自身の話に戻って、Vest も Down も着ないなんて意固地なことを言ってきたものの。
喰いものでも服でも喰わず嫌いは良くない。
意外と嫌いだったものでも喰ってみたら旨いなんてこともある。
僕にとっての Vest みたいに。


