三百十一話 IN THE MOONLIGHT

九月八日は、中秋の名月で、月が一年で最も美しいとされる夜。
地球に月が最も近づいた時に満月を迎えることを、Super-moon と呼ぶ。
さらに、今年は、二〇年に一度訪れる Extreme Super-moon の年となっているらしい。
天の道理には疎くて、なにが Super で、どう Extreme なのか、いまいちよく解っていないのだが。
とにかく、でかくて、明るいのだそうである。
九月八日の月曜日が中秋の名月で、翌日の九日が 今年三度訪れる Extreme Super-moon 最後の日。
御天道様の段取りは、そのようである。
そんな月を、義母はよく見上げていた。
月が満ちた夜などは、特に嬉しそうにしていた姿を想いだす。
訊かずじまいだったけれど、きっと月を眺めるのが好きだったんだろう。
嫁から持ちかけられる。
「ねぇ、月曜日休みだし、お月見の真似事でもやってみない?」
「いいんじゃねぇの、彼岸の入りにはちょっと早いけど良い供養になるかもな」
「仏間の広縁からも眺められるしね」
ってことで、設えることにした。

庭で、都合良く穂を揺らしていたススキを生けて。

これまた都合良く倉庫で眠っていた硝子酒器を掘出してきて。
鱧の湯引きを酒の肴に。
仏前には、義母が贔屓にしていた和菓子屋の月見団子を供えて。
月を待つ。

そして、噂どおりの、でかくて、まる くて、明るい月を観た。

カテゴリー:   パーマリンク