三百十話 No way !!!! OVER THE STRIPES !!!!

No way !!!!
まさか、嘘でしょ?
毛皮を細い帯状に裁断して、手編みして、セーターに仕立てる。
とまぁ、ここまでだったら高級メゾンが考えそうな手法としてありえると思う。
が、よりによって Lettered Sweater とは。
しかも、灰色に黄色の配色ですって。
毛皮が素材として持つセレブ感を無視した暴挙だろう。
真っ当な服屋としては、完全に地雷アイテムの類だ。
手を出してはいけない。
しかし、自慢じゃないが、僕は、違う。
こういう服を前にすると、俄然根拠のないモチベーションが沸き上ってくる。
Over The Stripes デザイナー 大嶺保さんに。
「この服、Musée du Dragon で引受けるよ」
そして、発注数量を伝える。
「マジですかぁ?一店舗の数量としては危なくないですか?」
「危ねぇに決まってんじゃん」
「でも、何処にでもあるようなくだんねぇモノ見せたって、誰も喜ばないよ」
とは言ったものの怖いのは怖いので、 顧客様に予約をお願いしたり一応の販売努力を試みたところ。
一週間後。
「大嶺さん、悪いけど、この前の数量じゃ全然足りねぇわ」
「冗談でしょ? 凄ぇなぁ」
「だけど、こういうのって、なんかちょっと嬉しいよねぇ」
「ほんと、たしかに」
こうして、オッサンふたり、ささやかな皮算用で盛上がっていたのだが。
なにも僕が凄い訳でも、Musée du Dragon が凄い訳でもない。
果敢なモノ創りをするデザイナーがいて、それを受入れて買ってやろうという方々がおられる。
こんな御時世に、ほんとうに有難いことだと思うし、正直凄いなぁと思う。
さて、この奇天烈なセーター、実は、普通に被って着るセーターではありません。

毛皮の毛足で見えないように、双方向可動のファスナーが仕込まれている。
被り仕様による着脱ストレスを考慮してのことらしく、着てみると実際にその通りだ。
編手法としては、 ベースとなるネットに帯状の毛皮を巻付けていくのだが。
そのネットは、新しく開発されたもので強力な伸縮機能が付加されている。
伸縮機能は、動き易さだけでなく、着用感を喪失させるほどの軽さをもたらせてくれる。
ただ毛皮で編まれただけのパロッたセーターではないのだ。
ベテランのデザイナーならではの老獪な技が駆使されてあって。

これこそが、OVER THE STRIPES 大嶺保氏が魅せる No Way な逸品だと思う。

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