二百六十話 懲りませんから。

皆様のお力添えを持ちまして、先シーズンの商いも、総じてうまく事が運びました。
ただひとつの問題を除いては。
ダウン・ウェアです。
どうにもこうにも、頑張ってはみたけれど、残念な結末に。
反省しております。
なので、この春、新たな発想を駆使したダウン・ウェアを投入いたします。
凝りませんから。
冬でも苦戦したダウン・ウェアを、春にって?
頭悪ぅ〜。
しかも、かなり奇天烈で、際どい企画です。
まず、上質のブロード生地でシャツを仕立てる。
そのシャツと同じ生地を用いてダウン・ベストを創る。
で、シャツの上に、ダウン・ベストを羽織るという筋書きなんだけど。
もちろん、シャツだけでも、ダウン・ベストだけでも、着用して戴ける。
というか、そもそもは、そういう着方が常識的なんだろう。
そこを、なんとか、無理矢理にでも重ねてもらいたい。
今、パジャマのような服を提案しているデザイナーも多い。
中には、みたいなというより、パジャマそのもので、これ寝間着だろっていう服も見られる。
ちょっと極端過ぎて、自身で着ようとは思わないが。
ストレスからの解放を、服創りに反映させたいという心理は、理解出来なくもない。
中身はちっとも強くないけど、黒く男らしい服を着てればなんとかなる的な時代が続いた反動かも。
このシャツは、かたちこそドレス・シャツだが、襟にも、カフスにも、芯地は敢えて省かれている。
その点に於いて、パジャマ的と言えるかもしれない。
着心地でも、シャツ、ベストとも、この上なく滑らかな肌触りで、限りなく軽く仕上っている。
ほんとうに上質な紳士パジャマが欲しければ、高級シャツ屋に行って仕立てろ。
そんな欧州の貴族的な考えにも通じるくらいの気分にさせてくれる。
今回用いられた生地は、Thomas Mason 社から供給されている。
今では、伊 ALBINI 社の傘下となったが、
十九世紀産業革命以降、ずっと英国王室御用達を冠してきた織布屋である。
もちろん、あの品の良い艶としなやかさは健在です。
仕込まれたダウンの量も適度に薄く抑えられていて、意外とこれからの季節使えるかもしれない。
まずは、自分で試そうかと思ってます。

Numero Uno、発想は妙だが、マジな一着です。

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