四百八十一話 中野靖は、どこへ行く?

みなさん、ANSNAM の中野靖とかいうおとこの名を覚えておられるでしょうか?
別にお忘れになられていても、一向に構わないのですが。
僕にとっては、最も忘れたくて、最も忘れられない因縁のおとこでもある。
そんなおとこから、久しぶりに電話があって。
「蔭山さん、明日大阪で会えますかぁ?」
「別に良いけど、何時に?何処で?」
「朝九時頃に、梅田なんですけど」
「はぁ?朝っぱらから、おめぇと顔突き合わせたかねぇよ!」
「会うなら昼飯時だなぁ」
で、昼飯を喰いながら。
「ところで、僕、今何やってるかご存知ですか?」
「知らねぇよ、そんなもん」
「訊きたいですか?」
「別に、知りたくもないけど」
「実は、店を始めたんですよ」
「ふ〜ん、一膳飯屋にでも鞍替えしたの?」
「服屋ですよ!なんでデザイナーの俺が飯屋なんですか!それは嫁ですよ」
「えぇ!マジかぁ?夫婦それぞれに店屋始めたの?」
大丈夫なのかぁ?と問い質しそうになったけど。
やめた。
ここで関わっては元の木阿弥だ。
冷静に返さなければならない。
「まぁ、大丈夫じゃないの、その溢れる才能でなんとかなるよ、多分だけどね」
「服創りの才能に限ってだけど、余人を以って替え難い才だと思ってるよ」
「いや、それが仕入でやってるんですけどね」
「えっ?あんたの服じゃないの?」
何がどうなっていて、どんな店屋なのか?と問い質しそうになったけど。
やめた。
理解不能、予測不能、制御不能のおとこが営む店屋。
それはそれで面白いのかもしれない。
店名は?
ANSNAM ceder
場所は?
東京白金台。
そして、僕は?
絶対に行かない!
今後の人生で、このおとこと交わることだけは、避けなければならないから。
嫁曰く。

あんた、気付くのが遅いよ!

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