三百九十八話 ご当地伽哩

宅急便屋のおねぇちゃんが重そうに抱えてきた荷を前にスタッフが怪訝そうな顔をしている。
「石川県?この発送元って何処の誰?」
「石川県に取引先ありましたっけ?」
「ねぇよ!どうせどっかの染工場からだろ」
「開けてみりゃいいじゃん」
開けてみた。
ダンボール箱には、ぎっしりと伽哩が詰まっていて。
「ゲッ!伽哩だぁ!ぜ〜んぶ伽哩ですよこれ!」
「誤配達だろう、地下の食堂街宛じゃねぇの?」
「いや、でもミュゼ・ドゥ・ドラゴって確かに」
なんで大量の伽哩が服屋に?
そういや先日顧客の方がお越しになられた際に伽哩の話をしたような。
チャンピオン伽哩とかいう旨い伽哩が石川県にあるとかなんとか。
あっ!これってそのチャンピオン伽哩かぁ!だから石川県なのかぁ!
早速に御礼の電話をする。
「あのぉ〜、うちに 伽哩を送って戴いたりなんかしましたぁ?」
「あぁ、届いたぁ?石川県の知合いに本店から送るように言ったんだけど」
「あのぉ〜、それがですねぇ、量がちょっとぉ」
「えっ?足りなかったぁ?」
「いや、クイズ番組のなんとかを一年分っていうほどの量なんですけど」
「ふ〜ん、まぁ、とにかく試しに喰べてみてよ」
まったくもって豪傑なひとである。
わざわざお知合いに頼まれたそうで、だから発送主が存じ上げない方だったのか。
そんなこんなで晩飯は急遽噂のチャンピオン伽哩に。
全国には、ご当地伽哩と呼ばれる伽哩は数多く存在する。
なかでも加賀伽哩は異彩を放っているのだそうだ。
その加賀伽哩を代表するチャンピオン伽哩の正体とは?

お味のほどは三百九十九話でお伝えさせていただくつもりです。
有難く頂戴いたします。

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