三百四十五話 仕事に、念が、入っている。

高倉健さん。
二〇一四年十一月一〇日に旅立たれて四十九日目の今日。
中陰が過ぎ、ちょうど天界にお着きになられる頃だろう。
亡くなられて間もなくは、こんな blog で、逝かれる道を邪魔してはと思い控えさせていただいた。
もっとご縁の深かった多くの方が、立派な弔辞を送られるだろうし、語れるほどの人間でもない。
ただ、一言お礼だけはお伝えしておきたい。
高倉健さんにしてみれば、たまたま場末の服屋の品に目を止められただけなんだと思う。
気に入って欲しいと仰られたので、神田の “ 山ノ上ホテル ” までお届けさせてもらった。
それだけでも、とても有難く、この上もなく光栄な事なのに。
後日、数々の映画衣装を手掛けられた高名な女史が、Musée du Dragon までやって来られた。
「高倉のいいつけで、お礼とお届けに参りました」
そのとき、言付けられた言葉がある。

“ 仕事に、念が、入っている ”

一介の服屋と職人には、あまりにも過ぎた礼節だった。
高倉健さんは、誰に対しても、そういう気遣いを生涯貫かれた方だったんだろうと想う。
この言葉、今日まで、稼業の励みとしてまいりました。
ありがとうございました。

ほんとうに、ほんとうに、お疲れさまでございました。

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