三百三話 最後の JULIA 。

“ JULIA ”
ジュリアって、このオネェちゃんの名前じゃないよ。
でも、このモデルの歳を知って驚いた。
十五歳らしい。
末が恐ろしい。
外人の女の子は、やっぱり早熟なのか。
もっとも、今時日本女子の十五歳がどんな調子なのか? と訊かれてもオッサンは知らんけど。
で、JULIA とは。
彼等が羽織っているカーディガンに使われている手編糸の名称で。
ベルギーのフランダース地方に所在する Kortrijk という街で紡がれた亜麻糸である。
ブリュッセルにほど近いレイエ川に沿って開けたこの街は、ちょっとした規模を誇っている。
ベルギーという国名が麻に由来するように、Kortrijk は、古来より最高峰の麻産地として知られる。
今でも在るのかどうか定かではないが。
街中には、 Vlasmuseum とかいう麻にまつわる立派な博物館まで建てられていたように思う。
亜麻は自然作物で、天候や土壌や水質の影響を受けやすく、人の想い通りにはなかなかいかない。
そういった意味に於いて、葡萄酒の醸造に似ている。
飛切り良い時もあるし、まぁまぁの時もあって、まったく残念な時もある。
だから、Kortrijk の人々は、暮し向きのほとんどを天に任せて生きてきたのだと思う。
そんな Kortrijk Linen のなかでも JULIA は、特に土の香が染付いた素材かもしれない。
ファイバーになる手前の段階をスライバーという。
スライバーは、繊維を一本一本棒状に平行して引き揃えた状態で、これを撚ると糸となる。
JULIA は、完全にではないが、見たところスライバー段階に近い形状をしている。
撚糸による影響をあまり受けず、柔らく、植物としての亜麻本来の風合が楽しめる。
JULIA は、なんにでも使える素材ではない。
ひとの手で編むことでしか、衣服にはならないだろう。
撮影された Vlas Blomme のカーディガンも、そうやって創られている。
だが残念なことに、この JULIA と称される糸。
これから先、Kortrijk Linen に特化した Vlas Blomme でも手に入らないことになりそうだ。
Kortrijk で特別注文により紡糸されてきたのだが、生産が中止されるらしい。
どういった事情でなのかは、知らない。
とにかく、これが最後の JULIA である。

なので、ご興味のある方は、この機会を逃されませんように。

 

 

 

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