二百三十六話 大人流儀の PUNKS !!

あぁ〜、ようやくだわぁ。
毛皮だの、紡毛だの、口にするのもおぞましい暑さから解放された。
ったく、お天道さまに文句垂れても仕方ないけど、商売的には正直辛い。
そんな暑さも遠のいて、ようやく違和感なく冬支度を話題にできるようになってきた。
そこで、この冬の mainstream 的な話をさせていただきます。
丈の長いコートが大勢を占め、ブルゾンが影を潜める中、例外と言えばこのふたつだろうと思う。
ひとつは、Award Jacket で、日本風に言うとスタジアム・ジャンパー。
いまひとつは、 Riders Jacket で、特にクラッシックな仕様のものが注目されている。
この Riders Jacket なんだけど。
Leather を得意とする御店とかに伺うと、必ずこんな事を言われる。
⎡格好良さを求めるなら少し小さめのを選ばれて、頑張って自分だけの一着に育ててください⎦
Riders Jacket を育てるって?
育児期間のきつくて辛いのを我慢して、乗り越えた先に良い子が育つのだと力説する。
そして、こうも言ったりする。
⎡その過程がまた楽しいんですよ⎦
マジかぁ?
さっぱり解らん。
ハッキリ言っときます。
⎡無理です!⎦
我慢とか、窮屈とか、大枚叩いて、なんでそんな目に合わなくちゃならねぇんだぁ。
とまぁ、そんな事情もあって、この 08 Sircus の Riders Jacket です。
アウター・シェル素材には、Cowe Raschel 機で編まれたポリエステル・ジャージーが使われている。
国内に数台しか可動していないこの編機は、特異なニット素材を産む。
簡単に言うと、ニットの伸縮による着心地と、織物のような仕立映えの両方を備えた素材みたいな。
その伸縮性を活かして、波打つようにファスナーを据えてあり、圧倒的な立体感を実現している。
化合繊にありがちな平面的な薄っぺらい感じは、欠片もない。
この着想と技術が、森下公則ならではなんだと思う。
そして、なに革にせよ、なに合繊にせよ、真冬に要求される保温性を担保できるのか?
その点についても、明快で、この上ない答が、この Riders Jacket には用意されている。
なんたって、総毛皮のライナーが、袖先まで惜しみなく装着されていますから。
毛皮は、Rex Rabbit なので、抜毛がアンダー・ウェアにつくという面倒な話にもならない。
通常、ここまでの容量の毛皮ライナーを着脱仕様にすると。
付けた時か、外した時か、どちらかを優先させることになり、能書通り二通りに着るのは難しい。
でも、この Riders Jacket に関しては大丈夫です。
なんでかって、解説しても長くなるだけだからやめとくけど。
そこが、服創りの妙技ってもんなんです。
とにかく、最高によく出来た服だと言えると思う。
この前、PUNK の父 Malcolm McLAREN の話をしたのを憶えておられるだろうか?
もし、旅立つ前なら、欲しがったんじゃないかなぁ。
晩年、重く硬い服を嫌ったという。
軽くて、ホッカホカに暖かく、だけど PUNK SPIRIT は、ちゃんと秘めていて。

僕等が、これからの仕事に求める “大人流儀の PUNKS ” って、こういうもんなんですよ。

 

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