二百三十四話 BANDANA PANTS

売口上じゃなくて。
まったくの個人的な趣味というか、癖の話なんだけど。
昔から、街中で柄物のパンツを見かけると、よほどの事がない限り買ってしまう。
そのよほどの事とは、柄が東洋民族調だったりした場合だ。
これは、もう諦めるしかない。
嫁に諌められるまでもなく、自分の姿を鏡に映すと、どっかの密売人にしか見えないから。
こういう嗜好の男は、他にもいるんだろうか?
この歳になるまで出逢ったことがないんだから、あまりいないんだろう。
あまりいないから、誰も創ろうとしないんだと思う。
端から売れないものを創る馬鹿はいないし、仕入れる阿呆もいない。
ただ、馬鹿でも阿呆でもないのに、こういったモノを創ろうとする人が、たま〜にいる。
“ JOINTRUST ” のデザイナー 藤田将之君。
寡黙な人だけど、良い度胸してるわぁ。
コレクション・ブランドのランウェーを舞台に経験を積んできたデザイナーだが、
今までバイヤーやユーザーに直接接触する機会はなかったと聞く。
要は、市場を体感することなく独立し、デザイナーとなった訳だ。
⎡そりゃぁ〜、この時世で、ちょっと無理なんじゃないの⎦
業界の玄人連中が判断するとそうなるだろう。
市場傾向を分析し、消費者の欲求を把握し、適正価格を設定して、訴求力のある製品を産む。
至極真っ当で、当たり前の話だ。
でも、それは、堅気の世界での話でしょ?
我々は、まともな市場原理が通用する堅気の世界に生きてないし、どっちかって言うと博徒に近い。
博徒が、堅気の真似することほど不細工なことはない。
だったら、市場原理なんて用も無いし、端から知らない方が良いじゃんみたいな。
自分の感性を表現出来る腕を資本に、一か八かの服創りに臨む。
そういうクリエーターは、ほんとうに少なくなったと思う。
みんな妙に小賢くなって、 気がつけば右も左も皆同じって、やってる意味あんの?
そんな中にあって、この 藤田将之っていう人。
柄パン創ってくれたから言う訳じゃないけど。

職業的に、この人も、この人の創る服も、僕は好きだね。

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