二百十五話 THE HUNTER

 

MA-1 Flight Jacket かぁ。
な〜んか、昭和なんだよねぇ。
何処の、誰に、憧れたのかは別にして。
昭和生まれのオッサンは、一度や二度は袖を通したことがあるんじゃないかなぁ。
一九八〇年 、Buzz Kulik 監督作品 “ The Hunter ”
Steve McQueen は、現代の賞金稼ぎをこの MA-1 Flight Jacket を羽織って演じた。
そして、本作は、世界中の男達が憧れた名優の遺作となる。
しかし、MA-1 Flight Jacket を着たからといって。
“ Top Gun ” の Tom Cruise にも、“ The Hunter ” の Steve McQueen にも、絶対になれない。
昭和生まれのオッサンは、そこを謙虚に受止めて、諦めるということをしない。
もう、自分が日本人だということすら忘れている。
鼻汁垂らしながら、いつかはウルトラマンになれると信じてたガキの時分と変わりはない。
Tom Cruise も Steve McQueen も取敢えず同じ人間なので、
銀河系から三〇〇万光年も離れたM78星雲出身の宇宙人より少し近づいたと言えなくもないが。
いづれにしても、平和でオ馬鹿なオッサンに、“成長”の二文字が欠如していることは確かだ。
どちらさまの奥様方も、御主人のそういった言動には、匙を投げておられると存じます。
そこで、一応プロの端くれとして、痛くない MA-1 Flight Jacket の着こなしを考えてみました。
ここに、BACKLASH の片山勇氏が創った 一着の MA-1 Flight Jacket があります。
身頃は米軍用品規格に沿ったナイロン、袖には水牛革を使用しヴィンテージ加工が施されています。
組立、加工、解体、再組立と非常に凝った製法によって創られた MA-1 Flight Jacket です。
この際、デニム・パンツに、Tーシャツに、登山ブーツといった組合わせは、我慢しましょう。
どうしてもやりたければ、米兵相手に営んでる厚木のスナックにでも行ってください。
まずボトムには、細身のチェック柄ウール・トラウザーを合わせる。
裾の仕上は、くるぶしの上辺りで短く設定し、折返しは五五ミリ程度で幅広く返す。
インナーには、フォーマル・シャツに使用されるアート・ピケ素材の白シャツを。
襟型は、フレンチ・カラー。
靴は、潔くヒョウ柄の Punk Boots、 但し、大人なんだから本物のハラコ素材でお願いします。
ここまできたら、英国本家 Wendy’s のスタッズ・ベルトなんかも巻いてみたい。
ざっとこんな感じで、如何でしょうか?
言っときますけど、あくまでも上質でシンプルであることが肝心です。
やり過ぎは禁物ですよ。
間違っても、鼻にピアスとか、頭部をツンツンさせてはいけません。
ご近所の手前もありますし、築かれてきた社会的立場が足元から揺らぎます。
それに、なにかと免疫力が低下しがちな年頃です。
ピアスによるちょっとした雑菌の侵入も命取りになりかねません。
加えてツンツンすると、量的な問題で頭皮が透けて風邪引きますから。
くれぐれも、これ以上馬鹿な行為は慎みましょう。
以上、Musée du Dragon 流 MA-1 Flight Jacket の服装術です。

余計な御節介で、ご無礼申上げました。

カテゴリー:   パーマリンク