秋冬コレクションを始める時、 いつも思う事がある。
デザイナーの多くは、アウター・ウェアーの開発に血道を上げて取組む。
ランウェイでも映えるし、いじくる箇所も多いし、売価も高いし、注目度も高い。
まぁ、要するに創り甲斐のあるアイテムなんだろうけど。
力の入れ具合といい、アイテム構成比率といい、あまりに偏った仕事振りが目立つ。
特に、日本人デザイナーには、 そうした傾向が強いように感じる。
コレクションを眺めると、裸にコートを着せて歩かせるつもりか?というようなのもある。
御客様にとっても、店屋にとっても、困った始末なのだ。
おい、聞いてんのかぁ?
中野靖、てめぇのこったよぉ!
こっちは、その穴埋めに東や西に駈けずりまわって。
下げたくもない頭をぺこぺこと、いい加減にしろって言うんだよ!
そんな悲しい現実を、あっちこっちで愚痴ってると。
捨てる神もあれば拾う神もあるもので、ひょんな事からひとりのデザイナーを紹介された。
JOINTRUST のデザイナー藤田将之君。
コレクション・ブランドでの経験を持ち、巴里コレクションにも助っ人として参画していたらしい。
だからという訳ではないが、確かな腕を持ったデザイナーに違いはない。
穴埋めとか言って取扱うのも失礼な話だが、正直に現状を伝え、サイズ感についても調整して戴く。
この藤田君というひと、もの静かで繊細そうに見えるが、何事にもぐだぐだ言わず即決する。
実に気持ちの良いひとである。
取り敢えず、今期については、シャツ、ニット、パンツを中心に展開しようと思う。
なかでも、このシャツ。
Vintage Ecology Bag を素材として採用している。
その素材を、複雑な縫製仕様で縫い合わせ、漂白加工を施しシャツへと仕立てる。
独特の表面感を生んでいて、魅力的なシャツだと思う。
Remake 製法にありがちなボロさや汚さは全くない。
検品の際に、とにかく運針がドレス・シャツ以上に細かく丁寧な事に驚かされた。
事前に、生地、縫製ともに強度は充分だと聞かされていたが、改めて納得する。
良いかも、いやこれは良い。
この調子だと、次に仕上ってくる Trouser も期待できそうだ。
ほんと、捨てる神あれば拾う神ありである。
ところで、捨てる神の方だが。
その有余る才能を、もうちょっと均等に振分けて貰えませんかねぇ。
中野靖先生、ほんとお願いしますよ。