月別アーカイブ: April 2026

六百九十九話 Giant Hornet Busters !

桜の花が散った後、新しい緑に覆われ庭全体が明るく華やぐ。 そんな季節を迎えた頃 “ 海辺の庭 ” に凶暴な使徒がやってくる。 Queen Giant Hornet (オオスズメバチの女王)だ。 絶対に負けられない戦いの幕開けなのだけど、僕は芯がやさしいので参戦しない。 眺めているだけ。 周到に罠を仕掛け、入念に毒を盛り、着実に死に追いやる。 海辺の Hornet Busters とは、我が嫁のことだ。 おんなとおんなの闘い。 怖っ! ここで、このオオスズメバチとは何者か?についてちょっと解説しておく。 スズメバチ科のなかでもオオスズメバチは世界最大級で、働き蜂でも四センチくらいの大きさ。 女王蜂ともなれば六センチ近くにも達する。 その凶暴性と毒性も半端なく、場合によっては死を招くことも。 但し、雄は毒針を持たず戦闘や営巣などの労働にも従事せずだいたいが巣の外に出ることもない。 役割は交尾専門で、行為が終われば死ぬ。 どの種に於いても、雄は哀しくやさしいいきものなのだ。 秋、働き蜂はその短い一生を終える一方、女王蜂は次の女王蜂候補を専用の育房で育て始める。 育て終えた元の女王蜂は、そこで他の働き蜂同様寿命を終え巣は消滅となる。 代を継ぐ一体だけを残し他の蜂は全てリセットされるわけだ。 女王蜂候補は冬を越すため、余分な脂肪の燃焼となる労働はせずに育つ。 独り冬眠し春になって眼を覚ます。 そして、新たな巣を作り、働き蜂の卵を産み、巣を大きくさせていく。 女王蜂は、種の継続のみを最優先し無駄な戦闘や労働はしない。 よって、働き蜂のような攻撃性は低いと言われている。 この点に狙いをつけて登場するのが我が嫁だ。 女王蜂が、目覚めてから営巣に着手する四月中旬から五月下旬までの期間に葬り去ってしまおう。 冬眠直後の女王蜂は体力が落ち行動が鈍く、加えて営巣に気を取られ警戒心が散漫になっている。 さらに、腹が空いているので容易に餌にも食いつくだろう。 ここしか仕掛けた罠によって根源を断つ機会はないと言い切る Hornet Busters の嫁 … 続きを読む

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六百九十八話 鉄のゲージツ家

今月のなかばに逝かれた。 「鉄のゲージツ家 」篠原 勝之さん。 もっとも晩年は、鉄から土に替えられ作陶家として活動されていたらしい。 浅草の隅田川岸に在った KUMA’s FACTORY の工房でお逢いしたのは一九八〇年代の終り頃だった。 双方の知人であった絵描きの紹介で、仕事をご一緒させていただくことに。 クマさんの愛称で、当時「笑っていいとも!」を始め多くの TV 番組に出演されていた有名人。 また、かつて新宿歌舞伎町界隈では玄人の喧嘩師として鳴らしていたという噂も耳にする。 やばいひとじゃなければ良いけど。 まるで鉄工所のような工房の奥から坊主頭の篠原さんが出てこられた。 知られた着流し姿ではなく、作業用のつなぎを着て頭には溶接用の防護マスクを被ったままだ。 「おまえさん、何やってるひと?」 「ファッション屋で、世の中になんの役にも立たないモノ創って飯食ってます」 満面の笑顔で応えられた。 「いいねぇ、そういうの!ところで、これなんかの役に立つと思う?」 眼の前には、錆びた鉄製の巨大オブジェがあった。 「よくわかりませんけど、多分、役には立ちませんね」 「だろ!じゃぁ、おまえさんと俺は同じ土俵にいるってわけだね」 この問答の際には解せなかったが、今ではなんとなく腑に落ちるような気がする。 「皆はなんにでも意味を求めるが、たいてい意味なんかない」 「生きることにも意味はないが、といって早く死ぬこともない」 「ただ生きてるから生きてるんだ」 表題も銘もない作品に対して、解説を求められた篠原さんの答えだ。 ひとは、意味や目的を知ることで安堵し生き甲斐に繋げていく。 それを放棄してただ生きろと言われて生きるには相応の覚悟がいる。 その覚悟を作品を通して問いかけてこられたようにも想う。 産まれて、生きて、最期には死んで土に還る。 本質は、ただそれだけ。 篠原勝之作品は、滅びの美学への探究だったのかもしれない。 ほんとうに良くしてもらって、やさしい方だったが、一方で厳しい方だったような気もする。 不思議な魅力を纏った唯一無二の存在だった。 漂えど沈まなかった「ゲージツ家」篠原勝之さん。 ありがとうございました。向こうでカツさんによろしく!さようなら!     … 続きを読む

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六百九十七話 桜の盛り

今年も海辺の庭に咲く桜。 五分咲くらいの今が一番綺麗なように想う。 すっかり老木で姥桜の類だけれど、老いてなおお盛んな様子でなによりだ。 咲き始めの頃ちょうど満月で、米国の先住民たちは Pink Moon とか呼ぶのだそうだが。 こうした月夜の桜も色気があってなかなか良い。 まぁ、大年増も捨てたもんじゃないわ。      

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