四百六話からの続きです。
「うわぁ〜、表と裏がちゃんと縫えてるシャツが仕立てあがってきたぁ!」
服地の表と裏を間違えずに縫うという至極あたりまえの事柄にこれほどの喜びを感じるなんて。
服屋稼業を三五年続けてきた挙句の話ですよ。
まったくもって情けない。
ほんとうにいい加減にしてもらいたい。
「まぁ、そう嘆くなよ、こうしてちゃんと仕立てあがったんだから」
「長くやってりゃ、どんな仕事だってこんなことのひとつやふたつあるもんなんだから」
顧客の方にそう慰められても。
ありません!
いや、ありえません!
それに、ひとつやふたつ、一度や二度じゃありません。
もう、僕のことは放っておいてください。
どうせ、もうすぐいなくなりますから。
そんなこんなで解説するのも億劫なのだが。
まぁ、出来としては上々なので気を取り直してご案内させて戴こうと思います。
正礼装の際に着用されるイカ胸シャツというアイテムがある。
シャツの胸部分には、糊付けされたダイヤモンド・ピケ地の綿布が用いられる。
英国王室御用達として、シャツを王室に納入してきた THOMAS MASON 社。
ここんちのダイヤモンド・ピケ地は、英国貴族的な趣があって格別だと思っていた。
残念な事に、THOMAS MASON 社は伊 ALBINI 社の傘下となり今では伊生産となったが。
それでも、がっしりとした肉感のある偉丈夫な風格は残されている。
そんな貴族的な生地で仕立てたシャツを洗い晒しで着てみてはどうか?
THE CLIMAX SHIRTS で試みてみた。
それが、この Musée du Dragon 的 Snobbish Shirts です。
そして、製作したのはあの奇才 ANSNAM デザイナーの中野靖先生です。
チッ!!