四百三話 女性服

Musée du Dragon は、紳士服屋で女性物は扱っていない。
そう思っておられる方も多いと思う。
しかし、実際にはまったく扱っていないわけではなくて。
女性顧客の方も少なからずいらっしゃる。
こんな色気の欠片もない服屋にどうしてと不思議な気もするが、それはそれで有難いはなしである。
自慢じゃないけれども、僕は婦人服についてなんの見識も持合せていない。
なので、女性向けだからといって目線を変えるということはないし変える能力もない。
仕立てのあり方や素材へのこだわりも基本的に同じである。
世の中には、それが良いという酔狂な方もおられて長年通っていただいている。
そういった方々に、今期ご用意させていただいた一着がこれ。
TAAKK 森川拓野君のコレクションから選んだ。
Super 一二◯のビーバー生地で仕立てられた Bomber Jacket。
内側には一メートルあたり一二◯グラムの新素材綿を仕込み重ねて縫製している。
丈は短くモッコリとしたフォルムである。
だが、ここで終わっていれば Musée du Dragon では扱わない。
天才的変人デザイナーである森川拓野君らしくもない。
胸から肩周りをご覧いただきたい。
伊製ローピング・ウール糸を放射状に刺繍してある。
森川君曰く。
求心編みの印象を狙ったのだそうだ。
求心編みなんて、三◯年以上前に流行した編組織をなんでまた今頃持出すのか?
それをまた刺繍で表現しようなんて。
やっぱりかなり歪んだ思考の持主である。
まぁ、手法はともかくこの Bomber Jacket 女性の方が羽織られるとなかなか良いと思うのだが。
数人の男性からこれのメンズ版は Musée du Dragon にはないのか?
と、お尋ねがありました。

ありません。

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