四十八話 「 ROAR 」厄明けの十周年。

この国には、いにしえより民族に深く根付いた風習がある。
“ 厄年 ”
ある年齢になる度に、災いに見舞われるという。
意味は簡単明瞭だが、見舞われる方は堪ったものではない。
“ 厄祓い ”という頼りない処方箋はあるが、僕には効かなかった。
もっとも処方する方からすると、お陰でその程度で済んだのだと言う。
だが、この上はないというくらい、心身共にボロボロにして戴いた。
誰に言っても、⎡立派な厄だね。⎦と納得して貰えると思う。
ROARのデザイナー、濱中三郎氏に会った。
⎡ROAR設立十周年、おめでとう。⎦
⎡ところで、濱中君、厄年じゃないの?⎦
⎡後厄です。⎦
⎡ふ~ん、何かあったぁ?⎦
⎡何かあったかって、知ってるじゃないですか。⎦
あぁ、あの事件ね。
思い当たったが、ここでは書けない。
まぁ、僕の時と同じ、⎡立派な厄だね。⎦と納得する類だ。
ただ僕は、そっちの方だけは円満だけどね。
それにしても、十年かぁ。
最初に会った小汚いビルの事務所、狭い床に転がっていた酒瓶を想い出す。
事務所には似合わない、きらびやかなクリスタルに飾られたコレクション。
ここまで装飾的な Men’s Wear は、かつて憶えがなかった。
⎡ロアーの濱中です。⎦
愛想も小想もない無口な兄ちゃんだった。
今では、人懐っこく、義理堅く、繊細で、そつの無い人物だと理解している。
コレクションを観た瞬間思った。
⎡この兄ちゃん、数年経ったら一財産築くな。⎦
一財産と思うかどうかは、人それぞれだろうが。
少なくとも、華やかな装飾に見合う、いや其れ以上の事務所と直営店を構えるに至った。
この時代に、見上げた手腕だと尊敬している。
さて、厄明けの十周年。
懇意のデザイナー達とコラボレーションするらしい。
素晴らしく、見応えのあるコレクションとなっている。
Musée du Dragon でも、ちょっと乗っかちゃおうかな。
Mastermind JAPAN との Parka と T-Shirt を展開しようと考えている。
スワロフスキーのガンメタル・スタッズをふんだんに配した ROAR らしいアイテム。
ご期待下さい。
濱中君、厄明けの十周年、絶好のタイミングだよね。

心よりお祝い申し上げます。

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