六百三十七話 魔除け?

海辺の家の裏手で生まれて、今は丹波篠山の山里に暮らすおとこがいる。
おとこは猟師で、猪や鹿や熊など獣を獲るのが稼業だ。
若いが、猟師としての腕は良いらしい。
仲間内での呼び名は、カーリマン。
優れた体幹を備え、見た目も良く、講演などもこなす口も達者だ。
数年前にちょっとした縁で知りあった。
お陰で、海辺の食卓に山の幸が加わるようになる。

この鹿肉のソーセージをはじめ、春先の脂が少ない猪肉は炭火で焼いて焼肉に。
熊肉はそぼろにして丼物でと野趣な彩りを食卓に添えてくれる。
ある時、カーリマンから狩猟法について教えてもらう。
「食肉として用いるものは、全て罠猟と決めているんです」
「でないと、血が巡ってしまって臭みが残り旨くないんで」
「ってか、食肉以外で獲ることあるの?」
「そりゃぁ、頼まれれば駆除とかで、その際は銃で撃ちますけど」
「その後の毛皮と骨は、こんな風にして残します」
鹿と思われる数枚の毛皮と白い頭蓋を見せられた。
「ヘェ〜、綺麗なもんだねぇ、欲しいかも」
「マジですか、じゃぁ、今度、骨を傷つけず一発で仕留めてきますよ」
一年後、届いたのがこれ。
眉間中央に一発の銃痕、歯の一本も欠けていない完璧な鹿の頭蓋。
凄腕の成せる仕業で、仕上げも完全オーガニックなのだそうだ。
早速、海辺の家の壁に飾ってみる。
欧州では、鹿は崇拝の対象、神の化身、英雄的な探求の象徴として館に飾る習わしがある。
逆に、風水では、骨は死の象徴として嫌われるらしい。
まぁ、どっちも信じてないから問題ないけど。
丁度、隣家に暮らす嫁の幼馴染が、スワッグをクリスマス用に創って持ってきてくれた。
彼女は、人気のフローリストとして活躍している。
で、合体させたのが、これ。

これで、良いクリスマスになります。感謝!

 

 

 

 

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