五百七十四話 初夏の前海から 

気持ち悪いと思うか?旨そうだと感じるか?
それは、こいつが何かを知っているか否かだろう。
実は、訊くまで僕も知らなかった。
正体は、鰆の白子なのだそうだ。
鰆は、春から初夏にかけて 産卵期を迎える。
これは、この時期だけの旬の地物だ。
嫁が、海辺の家の前海で揚がった鰆の卵巣を仕入れてきて調理するのだと言う。
「安くて、臭みもなくて、旨いんだよね、これが」
塩を振り、血管を除き、滑りを洗い落として、茹でる。
そして、紅葉おろしと葱を薬味にポン酢でいただく。

こんな感じ。
味は、河豚の白子やアンコウの肝に似ているが、より淡白で食べ良い。
昼網の地物だけあって、臭みもまったく無い。
初めて食ったけど、確かにこれはなかなか旨いわ!
この時期、瀬戸内海に面した牛窓あたりでは、鰆のアラで出汁をとり味噌汁にするらしい。

それはそれで旨いかも。

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