六百二十八話 ひと夏の宴

海辺の街。
海水浴場は、七月一三日に “ 海開き ” が行われて、八月二七日までの四六日間ひとで賑わう。
嫁は、幼い頃、水着姿で浮輪片手に坂を駆け下りていったそうだが。
さすがに今は、そうした原住民の姿を目にすることはなくなった。
それでも、毎日見かける子供達の顔は、日に日に黒く日焼けしていく。
肌が白い異人の子は、 可哀想なくらい真っ赤だけど、気にする様子もなくそれはそれで元気そうだ。
みんな盛り上がって楽しそうに坂を登り下りしている。
月が明けて八月になると、浴衣を着せてもらった海祭りに向かう女の子も登場する。
こうして海辺に巡ってくるひと夏の宴。

電車で一〇分もすれば着く街中では暑さで皆辛そうにしているのに、なにがどう違うんだろう?

 

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