神戸で夜の顔といえば、東門街。
それなりの歓楽街ではあるんだけど、大阪の北新地ほどオッサン臭くもない。
学生や外国人も多く行き交い、場としての敷居も低い。
震災やコロナ禍で、ずいぶん面子も変わってしまったが、それでも港街一の歓楽街として今も在る。
生田神社の東門前であることから東門街。
その生田神社にほど近い路地奥に人気の BISTRO が在るらしい。
“ BISTRO HEEK ”
ビルの二階、カウンターとテーブル席ひとつのちいさな店屋だ。
肩肘を張らない店屋と聞いたが、これは張らんわなぁ。
予約したテーブル席以外は鮨詰め状態で満席、人気なのは噂通りらしい。
「いらっしゃいませ!ご予約八時まで空いてなくてすいませんでした」
「ちょっと、先に便所借りるよ」
「どうぞ、その奥になってます」
用を足していると、壁に貼られた紙に書かれてある文言が目に入った。
“ TAKE OUT HEEK 特製 カツ・サンド ”
カツ・サンドがあるということは、俺の大好物である豚カツもあるのかぁ?
「ひょっとして、豚カツやってんの?」
「えぇ、できますよ」
「マジでぇ!じゃぁ、とりあえずその豚カツで」
そして、でてきたのがこの一皿。
「なんだぁ、これ!」
「ねぇ、疑うわけじゃないんだけど、この厚みで火通せてんの?」
「大丈夫ですよ、芯温きっちり測って揚げてますから」
「じゃぁ、いただくね」
骨付き三田豚肩ロースのカツレツ。
見た目も味も、豚カツ専門店とも洋食屋のそれとも全くの別物。
しかし、何かと訊かれれば、まごうことなき豚カツだ。
骨付きならではの絶妙の歯応え、脂の溶け具合、薄くさっぱりとした衣。
Parmigiano Reggiano の風味も合わさって、格別の一皿に仕上がっている。
伊風仕立なんだけど、こんなの現地でも食った記憶がない。
伊・仏・日・中どんな国のどんな調理法でも貪欲に取入れる HEEK ならではの逸品なのかも。
連日、地元常連が通いつめる “ BISTRO HEEK ” は、本日も満席です。
そりゃぁ、そうなるわなぁ。