月別アーカイブ: July 2025

六百六十一話 月桃が咲く頃

ようやく海辺の家への引越と片付けを終えた。 まだ、各種手続やら何やらは残っているものの日常は戻りつつある。 この二ヶ月ほどできるだけ庭は見ないようにしてきた。 庭仕事をやる余裕も気力もなかったから。 途中、Garden Gypsy 橋口君と高知在住の Surfer が多肉植物用の石を積みに来てくれたけど。 積み終えるだけ積み終えたら帰っていった。 なので、二ヶ月ほど庭はほったらかし。 この時期二〇日以上放置すると、葉は茂り、雑草は蔓延り、もはや庭とは云えない有様となる。 今朝、庭に出てその有様を目の当たりにした嫁が。 「ヤバくない?」 「あぁ、ヤバイな」 「どうすんの? Gypsy 呼ぶ?」 「いや、奴も忙しそうだから、ボチボチと俺がやるわ」 「この暑さの中? 死んじゃうかもね」 どこから手をつけたものか? 思案しつつ眺めていると、塀際に見慣れぬ白いモノが眼に入った。 「えっ? これって、月桃の花? 遂に咲いた?」 「嘘でしょ? マジでぇ! 咲くんだぁ、これ!」 花の蕾が桃のように見えることから、漢名で “ 月桃 ” という。 台湾や印度原産の熱帯植物らしい。 日本では、沖縄で自生しており生活に密着した生姜科の薬用 Herb として広く知られている。 もう三、四年前になるかもしれない。 “ 月桃 … 続きを読む

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六百六十話 この世で一番旨い Pesto Genovese!

大阪駅を北東へ、JR京都線の高架を潜る。 少し歩くと、いつの間にか時空が歪んだ世界に迷い込む。 木造の低層建物が、迷路のような路地にひしめいて並び建っている様はある種異様だ。 商都の一等地に灰色に燻んだ戦前の大阪が現実として生きて在る。 大阪市北区中崎町。 大阪大空襲を免れ、戦後の土地区画整理も及ばず、戦禍からも行政からも取り残された街。 長屋住人の高齢化も限界集落並みに進んではいるものの、暮らしがなくなったわけではない。 ステテコ姿の爺と普通に出くわしたりもする。 繰り返すが、此処は西日本で最も開発が進む大阪の玄関口から目と鼻にある界隈だ。 詳しくは言えない地元事情もあるにはあるのだが、それにしても街場とは不思議なものである。 此処を彷徨くようになって随分と経つが、今だ目的地に間違わず辿り着いた試しがない。 迷路が絡みつく路地世界が広がっている。 その路地の奥で偶然見つけた飯屋を訪れたのは、もう一〇数年前になると想う。 LA LANTERNA di Genova (ジェノバの灯台) 天井の低い穴蔵みたいな長屋で、外人女性がひとり営んでいた。 Boffelli Silvia さん。 生粋の Genova 人らしい。 生真面目で、賢そうで、なかなかの美人だ。 こんな路地裏食堂で、Genova 人が創る 本場 Genova 料理を食えるとは想像もしていなかった。 Genova 料理といえば、Pesto Genovese 。 伊で “ Genovese ” と注文すると、何故か違った食いものが供されたのを思い出した。 必ずと言って良いほど、牛肉と香味野菜をトマトとワインで煮込んだ茶色いパスタ。 どうも Pesto … 続きを読む

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六百五十九話 シン・トンカツ

神戸で夜の顔といえば、東門街。 それなりの歓楽街ではあるんだけど、大阪の北新地ほどオッサン臭くもない。 学生や外国人も多く行き交い、場としての敷居も低い。 震災やコロナ禍で、ずいぶん面子も変わってしまったが、それでも港街一の歓楽街として今も在る。 生田神社の東門前であることから東門街。 その生田神社にほど近い路地奥に人気の BISTRO が在るらしい。 “ BISTRO HEEK ” ビルの二階、カウンターとテーブル席ひとつのちいさな店屋だ。 肩肘を張らない店屋と聞いたが、これは張らんわなぁ。 予約したテーブル席以外は鮨詰め状態で満席、人気なのは噂通りらしい。 「いらっしゃいませ!ご予約八時まで空いてなくてすいませんでした」 「ちょっと、先に便所借りるよ」 「どうぞ、その奥になってます」 用を足していると、壁に貼られた紙に書かれてある文言が目に入った。 “ TAKE OUT   HEEK 特製 カツ・サンド ” カツ・サンドがあるということは、俺の大好物である豚カツもあるのかぁ? 「ひょっとして、豚カツやってんの?」 「えぇ、できますよ」 「マジでぇ!じゃぁ、とりあえずその豚カツで」 そして、でてきたのがこの一皿。 「なんだぁ、これ!」 「ねぇ、疑うわけじゃないんだけど、この厚みで火通せてんの?」 「大丈夫ですよ、芯温きっちり測って揚げてますから」 「じゃぁ、いただくね」 骨付き三田豚肩ロースのカツレツ。 見た目も味も、豚カツ専門店とも洋食屋のそれとも全くの別物。 しかし、何かと訊かれれば、まごうことなき豚カツだ。 骨付きならではの絶妙の歯応え、脂の溶け具合、薄くさっぱりとした衣。 … 続きを読む

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