月別アーカイブ: April 2023

六百二十五話 竹の花

昔、無類の筍好きだった親父によく連れて来られた料理屋が、京都長岡京にある。 明治期創業の老舗で、長岡天満宮の杜に囲まれるように数寄屋造りの座敷が並ぶ。 此処 “ 錦水亭 ” の名物は、隣接する広大な竹林から掘りだされる朝堀の筍を使った筍料理。 これを目当てに、春になると親父は毎週のように通っていた。 親父はもうとっくにおらんけど、代わりに腰痛の友達を無理矢理誘って久しぶりに足を向けてみる。 八条ヶ池を眺めながら、会席仕立ての皿が供されるという趣向は当時もそうだったように想う。 会席仕立ての都合上、一〇種くらいの料理が続くのだが、正直食べたいのは二皿だけ。 直径一五センチ程の輪切にした筍を出汁で煮た “ じきたけ ” 朝堀の筍を皮付で焼いた “ 焼 竹 ” この二品は、ほんとうに絶品。 あとは、筍飯でおにぎりを握ってもらえればそれで充分なんだが、商い上そうはならないらしい。 それでもそれなりに春の旬を堪能し、天満宮へのお参りも済ませた後、竹細工の工房を覗くことに。 かつて大阪万博の頃、筍懐石料亭 “ 錦水亭 ” は宿屋も営んでいたが、今は廃業している。 そして、跡として残された建屋には、“ 高野竹工 ” が、嵯峨野に在った工房を移して構えた。 竹細工技能集団として良質の竹の産地を求めてのことだったらしい。 斯くして、広大な竹林の整備・伐採は、“ 高野竹工 ” の職人達の手に委ねられる。 丁寧に油抜きし、数年寝かし乾燥させた竹から製作される作品群は見事だ。 野点の道具箱、茶筅、茶筒、茶杓などの茶道具から竹筆までさまざまにある。 さまざまにあるんだけど、親父の道具収集癖の後始末で懲りているので、竹箸を求めるに留めた。 職人の方に、いろいろとご案内いただいて、竹林を眺めながらお茶をいただく。 途中、煙草を吸って戻ってくる際、意外なひとに声をかけられる。 「こんにちわ、もしよろしかったら一本お持ちになりませんか?」 … 続きを読む

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六百二十四話 桜と藤?

海辺の庭。 手前が藤で、向うに見えるのが桜。 藤と桜の花が、重なって共にあるという姿を今まで見かけたことがない。 いくら気温が高いからと説かれても、あまりにも奇妙な景色に思える。 それはそれで大丈夫なんかなぁ?          

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