月別アーカイブ: November 2015

四百十二話 BOTTOMだけ?

ANSNAM 中野靖君! まぁ、正直なところ本音を言えば。 このおとこの日々の行状を blog に晒すのも飽きてきたし面倒臭いんだけど。 予約を頂戴している多くの顧客さんから、どうなっているのか?大丈夫なのか?と尋ねられて。 忙しい最中に謝り倒すのはもっと疲れる。 なので、この冬 ANSNAM Collection の入荷状況がどうなっているのかをお知らせしようと思う。 二、三日前だったか、ようやく届いた。 英国王室御用達の絨毯に使われている Crown Forest と称する糸を手織りしたという毛織物製品。 Buckingham Palace にどんな絨毯が敷かれているのかなんて知らないけど。 本人がそう言うんだからそうなんだろう。 肉厚の紡毛生地で重そうなんだが、手織りや仕立ての良さもあって抜群に軽い。 シルェットも申し分ない。 僕自身も注文していて、なんとか寒くなる前に間に合って良かった。 スタッフに。 「これ良いわぁ、ちょっと上着も試してみようかな」 「………………………。」 「なにしてんの?早く上着くれよ」 「ありません」 「なにが?」 「だから上着は、ありません!」 「はぁ?Bottom だけ?」 「ないって!なに納得してんだよ!すぐ靖に訊け!」 「納得なんてしてないし!わたしが悪いわけでもないし!ったく!あの野郎!」 結局、今年も靖君の行状にはなんの改善も望めないまま暮れていきます。 上着とコートについては十一月末には届くとのことでしたが。 すでにもう世間では十一月末です。

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四百十一話 The Attacks in Paris

  これが巴里? 三◯年間通ってきた街だけどこんな姿を眼にしたことがない。 Place de la Republique の中心には Marianne 像が据えられている。 Marianne は仏共和国を象徴する女性である。 Marianne が民衆を率いて歩む姿は市民の自由そのものを意味すると仏人の誰もが承知している。 二◯一五年十一月十三日 何者かがこの Marianne の膝元で凶行に及んだ。 敢えて凶行と言わしてもらう。 こんな行為を聖戦などと称する言葉で許容することなど断じて出来ない。 仏人は自由であることに格別の心情を抱く人達だ。 もし、自らの自由を侵されたとなれば。 どの国家や国民よりもしたたかに強情で決して屈しない一面を持ち合わせいる。 震えて眠れない夜を過ごすのは巴里を傷つけた者達に違いない。

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四百十話 最初で最期の BROGUE BELT

年が明けて、二◯一六年一月三一日には Musée du Dragon を終えるつもりにしている。 僕的には、稼業に区切りをつけるだけで特別になにかの感慨を抱いているわけでもない。 だから、淡々と普段どおりに仕事をしてなにも変わらぬまま幕を引きたいと思う。 ただ、こんな奇妙で気難しい服屋を理解し支えてくださった方々には感謝という言葉以外ない。 まぁ、信じてもらえないかもしれないがほんとうにそう思っている。 Authentic Shoe & Co. の竹ヶ原敏之介君もそのひとりだ。 英国での仕事を終えて帰国した直後からの付合いで。 Authentic Shoe & C0. という会社も foot the coacher というブランドも存在していなかった。 竹ヶ原敏之介の名で靴創りを始めたばかりの頃だった。 あれから一七年ほど経った今。 本人にそういった自覚があるのかどうかは知らないけれど。 日本の製靴業界を牽引している職人は竹ヶ原だと聞こえてくるまでになった。 国内だけでなく。 英 Northampton Museum and Art Galley 永久所蔵に始まり、仏、伊など海外での評価も高い。 俗な言いようになるが、功を成したということになるのだろう。 だが、長い年月竹ヶ原君が創るモノと真剣に向き合ってきて想うことがある。 いったい何人のひとが彼の心情を理解しているのだろうか? それは、世間的な成功失敗の尺度で測るのとはまるで違う。 … 続きを読む

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四百九話 中性脂肪?

どこかにぶつけた憶えもないのに、左足の膝が腫れて。 腫れたのに気付いた晩に高熱がでて。 それでも打ち身かと思って湿布薬を貼って我慢していたのだが。 二日経っても三日経っても腫れが引かず階段の昇り降りもままならない。 とにかく痛い。 こりゃぁ、駄目だなぁ。 店の近くの整形外科で診てもらうことにした。 プロ野球の選手も通うという評判の医者らしい。 赤黒く腫れている患部を眺めながら。 「あんた打撲とか言ってるけど心当たりでもあんの?」 「いや、それがないんだけど、腫れてるから打ち身かなと思って」 その答えも聞かず看護婦さんに。 「抗生剤の点滴を用意して!それから検査用採血も!」 「これからすぐ一時間ほど点滴するから、診療と検査を併せると二時間ほど戻れないからね」 「えっ?なに?俺なんか病気なの?点滴って悪い病気のひとがするやつじゃないの?」 「あんた馬鹿なの?病気だからここに居るんだし、悪いから治すために点滴するんだろ」 「いや、そうじゃなくて、なんの病気なのかってことを訊きたいんだけど」 「患部の赤黒さからしてまず間違いなく感染症だよ、最近ちゃんと休みとってる? 」 「全然休めてないけどなにか?」 「疲労で免疫が下がってるところへなんらかの菌が侵入して感染したんだろ」 「とにかく抗生剤を点滴して、一週間薬を服用して、血液検査結果を待つしかないな」 感染症だの、免疫だの、点滴だの、抗生剤だの普段馴染みのない言葉を聞かされて。 病気そのものよりもこういった言葉にとても弱い。 もう俺は駄目なのかもしれない、ひょっとしたら膝から下を切り落とさなければならないのかも。 悶々とした一週間が過ぎ。 「どう?まだ痛い?」 「痛くないけど、ちょっと痛い」 「まぁ、どっちでも良いわぁ、とにかく感染症だな、血液検査でもCRP値がこんなに高いんだから」 なるほど正常値の範囲を超えて高いことを示す( H )が記されている。 あれ?もう一箇所( H )と記載されているけど。 正常値 三◯ 〜 一四九 mg/dl … 続きを読む

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