百八十七話 Subculture Magazine 的な

なんか、出版業界も大変みたいだよねぇ。
特に、週刊誌も含めた雑誌出版物の落込みが激しい。
あんまり読まないからよく知らないけど、ファッション誌も例外ではなさそうだ。
女性誌ほどでないにしても、男性誌も休刊の名を借りた廃刊が相次いでいる。
“ high fashion ” “ BRIO ” “ HEART ” “ VOGUE HOMME JAPAN ” 等と有名どころも名を連ねる。
少子化やネット書籍の影響とか言われているけど。違うんじゃないの?
素人の私見だが、問題は中身だと思うけど。
平たく言えば、面白くないからって事に尽きるんじゃないかなぁ。
紙面の九分九厘まで服の写真ばっか貼付けといて、最後に⎡男のライフスタイルとは⎦って言われても。
⎡うるせぇよ!どっから目線で生き方云々の話してんだよ!⎦となる。
服屋で、客に人生語る馬鹿はいないでしょ?
さらに酷いのになると。
⎡僕は、月曜から日曜日まで、こんなの着て、こんなの食べて、こんな車に乗って…………………。⎦
⎡知ったこっちゃねえんだよ、テメェの暮し向きなんぞ興味ありませんから!⎦となる。
一九七〇年代中頃、それまでの雑誌の概念を越えた Subculture Magazine が創刊される。
平凡出版(現マガジンハウス)の男性誌 “ POPEYE ” である。
僕は、創世期の “ POPEYE ” と “ BRUTUS ” が雑誌のあるべき姿だと今でも思っている。
題字を飾った堀内誠一や作詞家の松山猛や写真家の三好和義はじめ、
片岡義男、由井昌由樹、田中康夫など、編集者、寄稿者には錚々たる面々が連なっていた。
そのなかのおひとり、“ POPEYE ” 全盛期のアート・ディレクター新谷雅弘さん。
昔、銀座の蕎麦屋で昼飯をご一緒したことがあった。
⎡雑誌学⎦を唱えられる業界きってのインテリは、雑誌についてこう語られた。
⎡雑誌は感覚的に捉えるしかないという浅さはかさかが、僕の性にあってるんだよね⎦
⎡ごちゃ混ぜの誌面から、一筋の光が飛出してきて瞬く間に消えてしまうような⎦
⎡雑誌の価値は、そういう儚さにこそあると思う⎦
雑誌は、編集者の主義や主張をひけらかす場ではないと思う。
もっと軽く浅はかなものだろうけれど、敢えてそれを承知で時代の瞬間を切取ってみせる。
後には何も残さないという潔さが 魅力なんだろう。
ここに、“ Numero uno ” の新作 Football T-Shirt がある。
この T-Shirt のデザインは、往年の Subculture Magazine 的な郷愁を感じさせてくれる。
小沢宏さんが手掛けられた。
彼もまたスタイリストとして、“ BRUTUS ” の編集に係わってこられたひとりだと聞いた。
時代を切取り写し出す術を心得た数少ないクリエーターだと思う。
それにしても、今時の雑誌の協賛と広告にまみれたあの分厚さはほんとうにウザイ。

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