五百九十九話 Valentine’s Day

ある時にはあんなにあったのに、無くなる時にはこんなにも無くなるんだと実感するものがある。
銭の話ではない。
いや、銭もだけど、他にも似たような話がある。
喩えば、Valentine’s Day に貰う Chocolate 。
あたりまえだけど、とんとやって来ませんなぁ。
Chocolate 好きだから、愛はいらないが Chocolate は欲しい!
だけど、来ないものは来ない。
だったら買えば良いのだけれど、この時期それも憚られる。
仕方がないので、手近なところで嫁に頼んでみるか。
「 Valentine’s Day なるものが近づいておりますけど、何がしかのものをいただけるんですかねぇ?」
「あぁ、うん、注文してあるよ、“ 南国酒家 ” の豚饅と焼売 、冷凍で渋谷から明日届くから」
「豚饅?焼売? いや、俺、Valentine’s Day の話をさせていただいているんですけど」
「だから、わたし、Chocolate 食べないし、あんたもコレステロール値が高いんだからやめとけば!」
確かに “ 南国酒家 ” の豚饅と焼売は旨い、しかし、なにかが間違っている。
そもそも、豚饅と焼売は、コレステロール値が低いのか?って話だろう。
依頼先をしくじった!
そんな状況下、大学時代の友達から紙包を渡される。
「これ、Chocolate 」
「マジですかぁ!これって、手作り?」
「滅茶苦茶面倒臭かったわぁ!」
いやぁ〜、このひと、ほんとは良いひとだったんだぁ。
料理の腕は知ってるし、日頃良いものばっかり食ってるから舌も肥えている。
しかも、好物の上に大がつく“ Orangette ” だぁ!
よくぞ、まぁ、こんな手間の掛かる逸品を、thank you です!
「溶けるといけないから、近くで珈琲買って、食べてくれば?」

いいえ、丁重に持ち帰ってパンツ履き替えてからいただきます!多謝!

 

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