五百八十二話 蝉は、意外と生きる。

はぁ? うっせぇ、うっせぇ、うっせぇわ!
なんなん? こいつら?
毎年毎年、夏の盛りになると地べたから湧き出てきて、鳴きまくる。
海辺の庭に “ ジージー、ジリジリジリジリ ” と響く。
早朝から夕刻まで、容赦なく飽きもせず鳴き続け、興が乗ってくれば夜鳴きだってする。
一体何匹いるんだろうか?
何百?いや千匹は超えるかもしれない。
正体は、間違いなくアブラゼミだ。
その名に由来する通り、油で揚げた際の撥ねる音を最大限に増幅させたような声で鳴く。
耳障りで、頭に響く、碌でもない音質で、なんの風情もありはしない。
ひとの頭に平気で上から小便を引っかけたりもする。
そして、地面は穴だらけ。
ほんとうに、なんの役にも立たない、ただうるさいだけのどうしようもない輩だ。
蝉は、幼虫として地中で六〜七年暮らし、成虫となってからは、地上で一週間ほどしか生きれない。
だから、その儚さに免じて虐めたり殺してはならないと教わってきた。
しかし、二〇〇〇年以降の研究で、アブラゼミは、結構ちゃっかり生きていることが解ったという。
一ヵ月程度は、元気に生きるらしい。
どうりで、一向に鳴き止まないはずだ。

茹だるような暑さに、この騒音、とっとと逝ってくれ!

 

 

 

 

 

 

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