五百七十七話 Home Made Dish

海辺の家。
隣の教授宅には、庭におおきな杏の木が植っている。
毎年、我家の桜が咲く前にうっすらと赤味のさした白い花をつける。
隔てた塀越しに眺めて 、今年も綺麗だと羨む。
「隣の芝生は青く、花は紅い」とはよく言ったもので、庭とはそうしたものかもしれない。
春には、我家から杏を、隣家から桜を、お互いに塀越に眺めるというわけだ。
もっとも、果樹や野菜など腹を満たせる隣の庭に比べて、うちの庭は食えないものばかり。
なので、季節毎に収穫された色々を届けていただくが、こちらからは何も返せないという始末だ。
先日も、杏のジャムを頂戴した。
今年は豊作で、たくさん実った杏。
その分、切込みを入れて半分に割り種を取り除く作業も増え、手がブヨブヨになったらしい。
ジャムは、甘めのものと甘さを控えた酸っぱいものとが、それぞれの瓶に詰められている。
甘いジャムは、パンやヨーグルトに。
そして、酸っぱいジャムは、これに。

“ American Apricot Spare Ribs ” です。

出来が良ければ、隣の教授も招こうかな。

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