五百二十六話 糞台風!

こっわぁ〜!
マジでおそろしいわぁ!
海辺の家のあたまの真上を通りやがった。
“ Jedi ” こと台風二一号。
北摂の自宅に居たので、ボロ屋の様子は実際にはまだ見ていない。
大阪も酷かったけど、ちゃんと生きてるのかが心配。
一夜明けて、駆けつけてくれた庭師からの報告では。
家屋は、無事。
庭は、ぐちゃぐちゃ。
五メートル近い梅の古木が倒れ、根っこが剥き出しになっているらしい。
「助けられる?」
「わからないけど、やるだけやってみる」
八〇歳を超える老庭師は、もう何十年もこの梅を世話してきた。
梅も老いたが、庭師も老いた。
今、梅を前にしているのは、代を継いだ娘の庭師だ。
「とにかく枝を打って、二股の幹を一本払って、埋め戻すわ」
「それから、囲いを作って支えようと思うんだけど、ちょっと見た目が悪くなるかも」
多分、ちょっとでは済まない姿になるだろう。
「いいよ!見た目なんかどうでも!とにかくやって!死なすんじゃないよ!」
「うん、わかった」
「これから、数ヶ月間水を欠かさず世話をしないといけないけど、どうする?」
「どうするもこうするも、俺と交代でやるしかねぇだろう」
寿命で尽きるのは仕方がないと諦めもするが、暴風から家を守って倒れたものを放ってはおけない。
見た目や、銭金や、手間の問題ではないだろう。
古屋に暮らすとは、そもそもそういうことで、面倒臭いものだ。

寒風のなか、毎年咲き始める梅の古木。

来年は、療養のため休業中につき、梅酒もなし!

カテゴリー:   パーマリンク