五百十三話 SUPER KABUKI ! ! !

市川猿之助のスーパー歌舞伎は、歌舞伎なのか?演劇なのか?
” ONE PIECE “
公演中日、大阪松竹座で観た。
正直、そんなのどっちでもいいわぁ!
空前絶後、抱腹絶倒、無茶苦茶面白い!
一張羅着て、大枚叩いて、時間を費やして、晩飯を幕間の弁当で済ませて、それでも楽しい。
いや、それすらも楽しい。
興行師の一族に生まれて育ったくせに、芝居の「し」の字も解さない残念なおとこでもそう思う。
これが、市川猿翁が世に送り出したスーパー歌舞伎か!
とにかくド派手!
歌舞伎座とブロードウェイとユニバーサル・スタジオを一気に巡ったような感覚。
それでいて、ドタバタの活劇に終わらないところがまた凄い。
浮世の喜怒哀楽を、どっしりとした構えで魅せてくれる。
「静」と「動」
芝居の醍醐味を余すところなく演じ、軽妙でいて培われた風格品格は微塵も損なわない。
絶賛とは、このような興行にこそふさわしい言葉なのだと想う。
それにしても、これだけの大芝居となると座内の方々も命懸けで挑まれているのだろう。
半年前の東京公演で、座長である猿之助さんの身にその事故は起こった。
舞台装置に巻き込まれ、腕を複雑に骨折された。
激痛の中、猿之助さんは声を飲み込まれたそうだ。
まだ席に観客が残っておられて、その気づかいから耐えられたのだと聞く。
当代 云々と評される役者の性とはそこまでのものなのか?
半年後、ご自身の奇跡的復活をルフィの台詞に被せて客席へと告げられる。
漫画 ” ONE PIESE ” は、希望の物語であるが、傷だらけの物語でもある。
満身創痍の復活劇を、ご自身に重ねられて演じられたのかもしれない。
また、市川右團次さんは、エドワード・ニューゲート役を演じられた。
別名 “白髭 ” は、海賊としての矜持を次世代に繋いでいくことを祈りながら果てていく。
これもまた、歌舞伎という古典をその身に受けて継いでいかねばならない自らの身上を想起させる。
“白髭 ” 役は、歴代の名役者が代々纏ってきた ” 義経千本桜 ” 平知盛のあの装束で演じられる。
この舞台が、歌舞伎の遺伝子によって成っているのだという確かな証と覚悟が迫る一幕だった。
公演ど真中なので、これ以上語れないけれど。
漫画 ” ONE PIESE ” と古典歌舞伎は、なにかと筋が似ていて相性がとても良いように想えた。
そして、特殊効果、映像、照明、宙乗り、早変わりなど、見どころは尽きない。
これらについては、さらさら言えない。
ただ、二巻の終盤だけ一言申し上げておきます。
舞台前数列に陣取られるおつもりの方々、くれぐれもお着物にご注意を。

空から何かが半端なく降ってきます。

カテゴリー:   パーマリンク