四百九十三話 Shabby Look!

UNDERCOVER 2017 Fall & Winter Collection に登場したロング・ベスト。
普段は、親交のあるデザイナー達の服しか着ないので、店屋で求めることは滅多にない。
だけど、UNDERCOVER のデザイナー高橋盾氏とはお会いしたことは多分ないと思う。
素直に欲しいから手に入れた。
もう随分こういう衝動から遠ざかって過ごしてきたような気がする。
稼業としての Fashion と、嗜好としての Fashion とは違う。
まったく違うと言ってしまえば偽りだが、好きだけを貫いて食っていけるほど甘い世界でもない。
刻々と流行が変わっても、ほんとうに好きなものはそうは変わらないんじゃないかと想っている。
流行と嗜好が、ぴったりと合致するなんてことはよほどの幸運だろう。
だから、どこかで自己の嗜好を殺して、流行に媚びながらやりくりしていく。
今更愚痴っても仕方がないが、Fashion屋というのも因果な商売だ。
では、そうは変わらない自分にとっての好きは何か?
一九八〇年代、贅沢な服への反定立から生まれたスタイルがあった。

「 Shabby Look 」

駆け出しの頃、倫敦 King’s Road 四三〇番地でその正体を初めて目にする。
Vivienne Westwood と Malcolm McLaren の服屋 Worlds End だった。
当時は、PUNK という概念すら解らなかったが、それでも衝撃的で。
ボロボロの服が、なんでこんなに格好良く映るんだろうか?と想った。
ガキは 単純だから、Fashion って凄ぇなぁとも想う。
あの感動から三〇年が経って。
Malcolm McLaren はこの世を去り。
かつての PUNK の女王 Vivienne Westwood は、Dame の称号を授かって体制側のひととなった。
そして、UNDERCOVER のこのロング・ベスト。
ゴミ袋みたいな素材、ボロボロに破られたリブ、大きな樹脂ファスナー、背面のグラフィック。
さらに、馬鹿みたいに大きなサイズ感。
「みすぼらしい格好」が、格好良いと感じたあの時代を蘇らせてくれる。
ちいさなカルト・ブランドだった UNDERCOVER も今では世界のトップ・ブランドだ。
その立ち位置で、こういった服を創る高橋盾というデザイナーは素晴らしい。

にしても、買ったはいいけど、これって、いつ?どこで?着たものか。

 

 

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