四百八十六話 まさかの同居人! 其の壱

ようやく法人解散の手続きにも終わりが見えてきて。
海辺の家で一息入れることにした。
庭仕事を終えて床で寝んでいると。
ガサガサと音がする。
場所は、一階と二階の間にある隙間からで、明らかに何者かがそこにいる。
真夜中に得体の知れない者の音だけを聞くのは、かなり不気味で怖い。
嫁とふたりで階下に降り、一階の天井を棒でちょっと突いてみた。
ガサッという擦れるよな音に加えて、ピィーという微かな鳴声が聞こえる。
「ふざけないでよ!なに?だれ?」
「何時だと思ってんの!やめてよ!」
で、力一杯ドンドン突いた。
これが、いけなかった。
バタバタ、ギャァギャァ、近所にも響きわたる騒音に変わる。
こうなると、相手もパニックだが、こちらも相応にパニックに陥る。
ドンドン、バタバタ、ギャーギャー、明け方までずっと続く。
海辺の家で一息どころか、ここ最近の運動量としては限界に近い。
「もうやめよう」
「イタチだな、これだけやれば身に危険を感じて出ていくんじゃないの」
「とにかく、庭師を呼んで追い出して、進入路を塞げばいいじゃん」
こうした人間の浅知恵が通じるような相手ではなかった。
写真は、イタチなのだが。
固定資産税の一文も払わず、海辺の家で子を産み、不法に居座っている輩はこいつではなかった。
もっとヤバくて、厄介な無法者との長い闘いの幕はこんな感じで開いた。

続きは、四百八十七話 其の弐で。

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